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雨粒
上で一緒に過ごした仲間たちが隣を駆けて落ちていく。それぞれ速さは違って、皆落ちる速さを競い合っていた。
僕はそれに興味がなかった。そんなことに意味はないとなんとなくわかっていたから。
皆もわかっているはずなのに、見て見ぬふりをして我先にと落ちていく。
そんなことをしなくとも体は勝手に落ちていくのに。
そろそろ僕の体も皆と一緒に加速を始めた。
空を見上げると僕らを生み出した母様が見える。母様はいつももやもやとして輪郭を掴みきれない方だった。別れは悲しい。
僕らの体は加速を続け、隣の仲間と離れたり、くっついたり、太陽の光を反射してきらきらと舞うように落ちていく。
下を見ると、もう終わりが迫っていることに気がついた。体の加速は限界に達し、もうこれ以上速くはならない。ものすごいスピードで落ちる。地面に迫る。
僕は、青々とした葉っぱに不時着した。水色に花開いた紫陽花の大きめの葉。そして葉っぱのすじにそって滑り落ちる。
僕の体は紫の紫陽花の花びらに当たって砕け散った。
僕だったものが光を反射し、花を照らして、彼らを綺麗に魅せた。




