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落書き小話  作者: Cornix
2/7

真夜中のキッチン

 ふと、目が覚めた。首を回し壁にかかった時計を見る。二時、多分深夜だ。窓の外が暗い。


「ふぁ……どうしたもんかなあ……」


 起きるにはだいぶ早い時間だ。しかし既に体を起こしてしまった上に、腹が強烈な空腹を訴えていた。このままでは寝着けそうもない。

 立ち上がり、キッチンへと向かう。あの小さな戸棚の中に何かしらの食料が入っていたはずだ。こういう緊急時のために買って置いておいた。


「シーフードと……なんだこれ、ナポリタン?」


 ラーメンなのにナポリタン。好奇心に負けて買ってしまったのだろうが、こういう時に未知の味に挑戦するのはいささかチャレンジャーが過ぎる。ここは安定のシーフード一択だろう。

 ポットに水を入れ、沸くのを待つ。カップ麺は大抵お湯を入れてから3分だが、お湯が沸くまでの時間がプラスされると非常に長く感じる。かといって何か別のことをするにも短すぎる時間。

 軽快で少し拍子抜けする音楽が流れ、ポットのお湯が沸いたことを知らせた。

 ここまでくれば後は3分。こぼれないように慎重にお湯を注ぎ、蓋をして待つのみ。

 箸を載せてできるだけ蒸気が漏れないようにする。蒸気が漏れるときちんと出来上がらないような気がして。実際どうなのかは知らない。

 それでも少し空いた隙間から、ラーメンの濃い匂いが漂ってきた。食欲を唆る匂いだ。

 3分が経った。少しワクワクしながら蓋を開く。

 内側に溜まった蒸気がむわっと溢れ、顔を包む。こんなド深夜に嗅いではいけない冒涜的な匂いだ。カラフルで小さな具材たちが、早く口に運んでくれと待ち構えている。

 パキッと箸を割り、手を合わせる。


「いただきます……」


 こんな深夜にいただいてしまうことへの申し訳なさと背徳感、全てに感謝しながら呟く。

 まずは箸をラーメンの中に突っ込み縦方向に回す。上に固まった具材を均一にするのだ。そうして混ざりきったかなという辺りで第一陣。少量の具とともに麺を掴み一気に口へと運ぶ。

 口の中に柔らかく温かい、それでいてジャンキーな味が広がる。

 黄色味がかってちぢれた麺は、元がただのお湯だと思えないくらい風味のある汁を口の中に連れ、具材たちは足りない食感、味の複雑さを補ってくれる。

 第二陣。本当に海鮮の味か?という疑問を打ち消して、「シーフードとはこういう味だ」と説き伏せるかの如く、ラーメンの味が舌を包み込む。

 気付けば箸は止まらず、第三陣、四陣とラーメンが口に運ばれる。ただでさえ美味いラーメンが空腹のスパイスによって味に深みを増している気がする。

 そうして次々口に運んでいると、そろそろ麺が少なくなってきた。底に溜まった汁と同じくらいの高さにまで減っている。

 もうラストスパートだ。最後の幸せをめいっぱい掻き込むのみ。

 カップ麺の容器を持ち上げ口元まで持ってくる。これを傾け、麺と一緒に汁を飲む。

 ここまでくればもうほぼ飲み物だ。一瞬よぎる塩分の数値を無視して、ラーメンの味に集中する。

 麺ばかりを口に入れていた時と違い、空いた腹に直接汁を流し込むような感覚。このカップ麺1つでは物足りないかもしれないという考えも一緒にお腹へ流れていった。


「ごちそうさまでした……!」


 深い満足感とともに手を合わせ、呟く。

これだから深夜のラーメンはやめられない。


 さて、明日どうしよう。


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