第十九話〜特訓〜
ある日、渋るトムさんを連れて、騎士団に来ていた。
例の特訓をするためだ。
剣は詳しくないけれど、要は実践を積めば良い話だ。
ということで、騎士団を訪れた俺達は、S級というのが効いて騎士団全員がお出迎えしてくれた。
「今からお前たちに戦いの訓練をつける」とトムさんが言うとドヨドヨっと騒がれた。
三者三様で、目をキラキラさせる者、平民が!と見下す者、こちらの出方を伺っている者など様々だ。
「1人ずつ俺にかかってこい!」と、トムさんがかっこよく言うと「平民風情が!」と貴族らしい1人の男が前に出てきた。レベルは25とこの世界では、中堅どころだろう。まあ、トムさんには遠く及ばないがな。
両者 剣を構えて、先に動いたのは貴族の男だった。「うおォォォ!!」と剣を振りかざして、トムさんに襲い掛かってきた。
トムさんは難なく避けて剣のつばで一撃を入れた。
「次!」
男は「くそっ」と言いながらドサっと倒れてしまった。
一瞬で勝負がついたのだ。
それはそうだろう。なんせトムさんはレベル90になっているのだから…。
こうして、次々と訓練という名の一方的な試合は進んで行った。
次は副団長が戦うようだ。
「お手柔らかに頼みます」と、もの腰の柔らかそうな人だった。
両者 剣を構えて、中々動きがない。トムさんが「ほう、少しはやるようだな。相手の力量が自分より上だと解っている」と言って笑っていた。
嬉しそうだ。やっとまともに特訓出来るからだ。
「かかってこい」とトムさんが言うと「では、」と副団長は切り込んできた。レベルを見ると副団長は40だった。この世界では高い方だろう。ちなみに、騎士団長は50だった。
数合やり合い、両者 間合いをとった。
騎士達からは「副団長!頑張って下さい!」と期待の眼差し。
一方で副団長の顔色は余り芳しくないようで、眉根を寄せている。
「貴方、強いのですね…」と副団長が言うと、トムさんが「それ程でもない。あそこのチビには負けるだろう」と言った。チビとは弟のことだ。副団長と、何故か団長までが驚いている。
な、なんだよ。こっち見んなよな!俺じゃないぞ、弟だぞ?!
最近では、弟は剣圧で地面を割るようになってしまった…(遠い目)
話がそれた。副団長は「私たちのレベルではあなたに到底及ばないようですね」と言って剣を収めた。
次は団長の番だ。「やっと俺の番か。待ちくたびれたぜ!」とヤル気満々だ。ヤルが殺るに見えるのは俺の気のせいであって欲しいものだ。
両者 構えると、団長が「いっくぜ〜!!」と突っ込んで来た。
数合やり合い「強いね〜!」と団長が言うと2本目の剣を抜いた。
両手剣使いか!
「オラオラッ〜!!」と、猛攻撃が始まったがトムさんは難なく応戦していた。
「くそ〜、これでもダメか〜!」と団長が諦めると騎士団員達が騒めいた。「団長の両手剣で倒せない人が居るなんて!!」
「各自、今日の反省点を明日に活かせ!」とトムさんが言った。
こうして訓練1日目は終了した。