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レンカさんを探している途中、リヒトさんに呼ばれた。ちょっと部屋で話しましょうと言われ、オレはそのまま後に続いた。なにを言われるのか冷や冷やしながら座れば、リヒトさんは笑顔でオレに言った。
「――アナタ、日向さんに触れましたね?」
なにを今更って思ったけど、リヒトさんが言う触れたとは、普通の触れたとは違うのか、目の奥が笑っていない……。
「お、オレ……なにか不味いことでも?」
「吸血に関しては、日向さんから許可を得ればと私もいいましたけど――まさか、口付けをするなど」
な、なんでそのことを!?
思わずたじろげば、シエロが見たとリヒトさんは言った。
「力が戻っているか試しで見たらしいですけどね。それでミヤビ――本当ですか?」
「いや、まぁ……ってか、リヒトさんに関係ありますか!?」
まるで尋問みたいな話に、オレは意を唱えた。すると――。
「関係ありますよ。私は日向さんの――彼女の、父親ですから」
途端、笑顔が黒い笑みに見た。この人、瞳がそのままでも十分に怖いんですけど!?
ってか、美咲ちゃんの親って……マジかよ。
「これが親としての感情なのですかねぇ~。他の男にかっさらわれるというのは、こんな気分とは」
「た、確かに触れましたけど。――ちゃんと本人から許可取ってます、ので」
「おや? アナタの性格からすれば、無理やりにでも迫っているのかと思いましたけど」
「オレだってそんな節操ないことしませんから!」
「今までが今までですからねぇ。まぁ、案外アナタは、本気になった方には奥手なのかもしれませんね」
「ってか、それを聞きたいが為に呼んだんですか?」
「いえいえ。本来の用事は別にありますよ。ただ、やはり親としては娘が心配ですから」
だから怖い! 怖い!
こっちを見る目が完全に殺してくれようか、って眼差しをしてる……。
もうこの部屋に居るのが拷問過ぎて、オレは早く本題に入って下さいって訴えた。
「まぁ、いいでしょう。――エメさんから、力について聞いたことはありますか?」
言われて、オレは首を横に振った。
自分の種族、と言うか。家系に力があるのは聞いたことはあるが、具体的には知らないと答えれば、リヒトさんは姿勢を正し話し始めた。
「アナタたちの家系、スウェーテには魔術を操る力があります。魔法にも似ていますが、どちらかと言えば、自分の力を使うので魔術寄りと思って下さい。魔法は、精霊などから力を分けてもらうことを指しますからね」
「でもオレ、一度もそーいった訓練とかやたことないですよ?」
「これは訓練どうこうより、血に宿る、の方が正しいかもしれません。本来、これは長が受け継ぐもの。アナタの家系は男性が継ぐものでしたが、予定が変わり、エメさんが一時的に受け継いでいます。アナタが受け継ぐ為には、己の力を否定しないこと。己を受け入れることです」
「そんなことでいいんですか? それなら簡単な気がするんですけど」
「エメさんから聞いただけですが……アナタ、昔に何かあったのでしょう? それも、人間の村を滅ぼすほどの」
言われて、オレはフェイのことだと思った。
「その時に絶望して、己を信じられなくなった。――違いますか?」
確かに、あの時は自分に絶望した。なにも出来ない自分がイヤで、壊すことでしか護れなかったことを。
「話したくなければそれで構いませんが、そうでないならお聞きしてもいいですか?」
言われて、オレは少し黙ってしまった。リヒトさんには、前に美咲ちゃんの前世と会ってる話はしてる。でもこれからする話は、あまりいいものではないと思うから、話していいものかと言葉を詰まらせてしまった。
「美咲ちゃんのことでもあるし……あまり、いいもんじゃないですよ」
前置きをすれば、いいですよ、と返事が返ってきた。それを聞いて、オレはその時のことを話すことにした。
「久々に会いに行ったら、処刑されるところだったんです。それで美咲ちゃんを取り返したら、変な術を使うやつがいて……」
「具体的にはどんな?」
「銀の弓矢に、刻印が施されたものです。それが足に刺さったせいで、体が焼けるように熱くなって、思うように動けなくなったんです。そのせいで――オレを庇って、美咲ちゃんは目の前で死にました」
あの時のことは、今でも鮮明に覚えてる。
貫かれた心臓の音。
剣が肉を切っていく音。
そして――フェイを刺した、男の顔。
忘れられるはずのないことに、オレの両手は怒りで震えていた。
「愛しい者が目の前で逝く姿など、見たくないものですね」
やわらかに発せられた声。思わず視線を向ければ、目の前にリヒトさんが来ていて。
「アナタは――よく頑張っています。誇りなさい」
なぜか、頭を撫でられていた。
「ちょっ! もう子どもじゃないんですけどっ」
「私から見たら、アナタたちは皆、子ども同然です」
そりゃあ、リヒトさんと比べたらそうだろうけど。
とりあえず、撫でるのはやめてほしいと言い、その手から逃れた。
「それで? 目の前で殺されるのを見て、怒りに任せて村を滅ぼしたと?」
「まぁ、そんなところです。でも、肝心の男は始末出来なかった。美咲ちゃんの――フェイの体を取り返すので精一杯だったんで」
「なるほど。それはさぞ悔しい時を体験したものですね。もしも、ですが――その男が現れたら、どうしますか?」
「そんなの、殺したいに決まってるじゃないですか。でももう、少なくとも200年は経ってる。普通ならとっくに死んでると思うけど」
ホントなら……この手で葬ってやりたかった。今、もしも目の前に現れたら、今度こそって思うけど。
「殺せるなら殺す。でも、今は美咲ちゃんが優先なんで、そこはわきまえますよ」
意外だったのか、リヒトさんはなるほど、と感心にも似た声をもらした。
「ちゃんと日向さんを見ているようで何より。過去のことを優先されたなら、この前の仕置きも含め、私が手を下しそうでしたよ」
「冗談でもそーいうこと言わないで下さいよ! ってか、これでも一応、前は向いてるつもりです。――エメのことも含めてね」
今までだったら、エメのことだけで精一杯だった。でも、それだけじゃダメだってわかったから。やれることをすると言えば、リヒトさんはいつもの笑みを見せてくれた。
「その気持ちを忘れずにいて下さい。――あと、日向さんのことはまたじっくりと」
訂正。この人、意外と根に持つタイプだ。
「お、お手柔らかに。――ってかそれよりも」
オレは、エメから知らせが来たことを伝えた。それなら集まりましょうということになり、オレたちはレンカさんたちの部屋に向かった。




