ラストターン
転生なんていまどき、誰だってやってる。それに、世間では二十歳なんてこれからだよ、とか言われるけど、お先なんて見えない。
配信アプリだって、なんだって、そこそこ人気が出ると、私はすぐに転生する。だって、人間関係とかめんどくさいじゃん。はいリセットリセット。
転生とリセット。デジタルの世界ならいくらでもできる。ほんとは現実世界だってリセットしたいくらいだけど、もちろん私にそんな勇気なんかない。
「ミナ、またゲームやってる。ソシャゲ?」
第一講堂で、私の名前をファーストネームで呼ぶのは、ミコトだけ。女みたいな名前で、一年のときからの付き合い。
「あーこれ、ちがうの。ソシャゲなんかめんどいし、ふつーのRPGを中古で買ったの」
「いまどき一人プレイて」
「だってシナリオなんか追うのはいまどきyoutubeでいいじゃん。これ、前にやったひとが飽きちゃったみたいで、もうラスボス手前」
「それやる意味あんの?」
「レベル99で、だいたいの街とか回れるしさ。コスパいいし、無双できるし」
ファイナルクエストっていうシリーズで、リメイク前の初版が発売されたのはいまから
二十年以上前。私がやってるのはリメイク版。
やりはじめるまでは、攻略サイトにだいたいの情報はのってるし、暇つぶしにはもってこいだと思っていた。
「ごめん、出席代返しといてー」
「ゲーム?」
「うん。さっさと終わらせたくて」
リセマラしなくたっていいし、ガチャもない。とりあえずやってみて、あとで攻略サイトを調べる。シナリオはyoutubeで追って、なんかやった気分になる。
本当にそれだけの予定だった。それが、どうしてこうなったのか。
私は帰宅してすぐ、ゲームを立ち上げる。そして、また始まるのだ。
終わらせることのできないラストターン。
「ミナ! あとは頼んだよ」
異世界モノって、あんまり好みじゃないってば。しかもさ、いざ自分が体験するってなったら、フツー、リセットでしょ。
なのにさ。なんでだろう。
「魔王に、あれを」
救いなのは、事故って起きたらそっちの世界から出られないとかじゃないし、いつだって私はこの世界から抜け出せる。
リセットだってできるし、なんならデータを消しちゃったっていい。
「うちらにできることはやった。これで、すべてが終わる。頼んだぜ、勇者さま」
私はいままで、攻略本とか攻略サイトみたいなものを見るくらいなら、自分がやる意味がないと思っていた。しかし、今回だけは本当に順番を間違えた。
「さあ、あれを!」
そうなのだ。その「あれ」。今回も、ノーヒント、っていうか。
無駄だとわかっていても、私はみんなのほうを振り返って、確認する。
戦士、魔法使い、僧侶、武闘家、商人、盗賊、ドラゴン。RPGの定番の職業。みんなが魔王を弱らせてくれたところで、私のターンがまわってくる。
「えとさ。めっちゃごめんなんだけどさ」
三回目ともなると、さすがに気が引ける。それでも、確認を確信にかえるために、私は言った。
「あれって、なんだっけ」