長年差別され続けた私、遂にキレる!〜差別した奴らを抜本的に滅ぼす〜
「神は二物を与えずッ!!」
世界中のどこかで、或る一人の漢がそう叫んだ。
その声は大気を通して海を渡った。
彼の母国は勿論。
国という国の境を越えて。
その声は──凡ての漢が問い返すにまで至った。
「では!! 一物はどうか!?」
答えは一つである。
漢は言った。
「我々漢の勲章なりッ!!」
阿呆極まりなかった。
だがそれも然り。
漢と書いて阿呆と読むのだ。
コレは自然の道理と言えよう。
「そうだッ!! 我々には一物がある!! だが!! 神は──」
道理なのは、しかしここまでだ。
以降道理は見る影もなく。
道理の道は非道の道に。
道理の理は理不尽の理に。
世界に合わせて、その姿を変えてしまった。
「──女には!! 一物をお渡しになさらなかった!」
……コレが、この世界における一物優勢思想の興りである。
※
「くっ!!」
仏頂面の悪漢に、小柄な少女が突き飛ばされた。
彼女は自身の尻を労るように手を添えて、その悪漢に怯まず食ってかかった。
「謝るぐらいすりゃあいいんじゃねーの? オッサン」
「オッ……オッサンだぁ〜ッ!? 天与の一物を持たざる女如きが!! 俺をオッサンだと言い腐りやがったのかァ〜!?」
「イチッ……!? なんだよ!! そんなモンついてたら何が偉いってんだ!?」
「ハンッ!! まさか知らんわけではあるまいな!? 神は二物を与えず!! 故に漢には一物がある!! だが貴様等女はどうだ!? 人間の頭から股にかけて敷かれた正中線を妨げる、ナニかが足りないとは思はねえか?!」
「ナニだよ!?」
「ナニだよ!! 王道の流れに付き合ってくれてありがとう!! そんなこんなで、貴様等女は我々漢の下に位置する!! 端女なんだよ下女なんだよ!! 地に這え蹲え跪けェ!!」
──知っていた。
少女とて、それが常識である事実は、知っていた。
しかしだからと言って、真逆それが「正しい」だなんて、信じた事は一度も無かった。
間違いなく間違っている。
百パーセント間違っている。
常々そう考えていたんだけれども、なかなか世に問題提起出来ずに居た。
コレは問題だ。
問題を問題と言えないのは他の何よりも問題だ。
だから──だからこそ。
少女はここで、初めての、正面からの反駁に挑んだ。
「それは──間違ってるぞ!! バカヤローーーッ!!」
「なッッッ!!!? たかが女が!? 目上である漢に向かってェ!? まッッ!! さッッ! かッッ! 口ッッッッ答えしたとでも言うのかッッッッ!!??」
「そうさ、いつまでも従順だとおもったら大間違いだよ……!」
「ならば戦争だ覚悟しろォッッッッ!!!! 明日!!! 世界中の漢達を招集するッッ!!! お前もせいぜい、なるだけの漢女を集めるのだなッッッッ!!!!! フゥーハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!!!」
第三次世界大戦の幕開けである。
※
戦いの火蓋は切って落とされた。
落ちた火蓋は灰すら残らなかった。
そのくらい酷い戦い──否、戦争なのであった。
友を亡くし慟哭する者の側で、家族を亡くし啼哭する者も散見された。
正しく「地獄」の様相を呈していた。
誰に望まれるでも無く、この戦争は長く続いた。
街が滅んで、国が滅んで、凡ての境が滅んだ頃合いに。
遂に人類は、漢と漢女。
アダムとイブの二人になった。
そして、奇しくもその二人とは──。
「よくぞ生き残った」
「そっちこそな」
いつぞやに少女を突き飛ばした悪漢と、突き飛ばされた少女であった。
「いっくぜぇ!!」
「応ッッッ!!!」
肉弾戦、だった。
その字義通り、拳と拳、肉と肉とが弾きあって、もはやコレは、セッ○スとさえ言える様相であった。
否、セッ○スであった。
ここに誤謬はない。
「先にイッた方の負け!! それでいいか!?」
「構わんッッ!!! 勝つのはいつだって漢なのだッッ!!!!!」
「「うおおおおおおおおおーーーーッッ!!!!」」
≪パンパンパンパンパンパンパンパン‼︎‼︎‼︎≫
漢は童貞であった。
それ故に前戯を失念していた。
経験豊富な少女がリードしたものの、コレは何よりの恥辱であった。
「オラァ!!!」
遅れを取り戻さんと、少女の低い双丘を掴んだ。
掌に柔らかな体温が広がる。
「────ッッ!!?」
そして、彼は気づく。
気づいてしまう。
「ようやく気づいた──みたいだな」
少女は笑みを浮かべた。
まるで勝利を確信したかのような、そんな不敵な笑みであった。
「コレはッッ!!!!?? 貴様まさかッッ!!!?? そうなのかッッッッ!!!??!!!」
「そう、そういう事さ──!!」
次の刹那、漢は死んでいた。
腹上死であった。
ただ直接的な死因はそうであっても、実質的にはそうじゃなかった。
臨終の際、彼の脳裏に瞬いた辞世の句を、ここに紹介する。
(天与の才、神は女に、二つ与えた。その両胸に、二物の夢を)
そう、彼は気づいてしまったのだ。
神は二物を与えたのだと。
おっぱいは、二つなのだという事を。
〜fin〜




