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班長のビートルズ

作者:守尾八十八
 欠陥だらけだった実家に残したまま忘れかけていた懐かしいレコード、カセットテープの存在を、谷本幾夫(たにもといくお)は妹の静子(しずこ)から知らされ、回想にふける。

 小学5年の幾夫は、6年の城崎遥(しろさきはるか)に、ほのかな憧れを抱く。それは恋心といって差し支えない。

 出会って半年で卒業シーズンを迎え、幾夫は遥と離れ離れになる。遥は幾夫が1年後に進学する予定の中学とは別の学校に進むから、幾夫にとって今生の別れの気分だ。

 中学2年の冬、メンバーだったジョン・レノンが米ニューヨークの自宅前で銃殺され、ふさぎ込んだ英語教師の授業が丸々1時間つぶれたことで、解散して10年経つ英国のロックバンド「ビートルズ」を幾夫は知る。

 ジョンが死んで3度目の冬、遥と再会する。きっかけは、幾夫にとっても遥にとっても時代遅れのビートルズだった。

 ところが、今度はわずか3カ月で、幾夫は再び遥との別離に見舞われる。幾夫は、親族の異常さを知りうる遥がいなくなることでかえって安堵するという防衛本能のような心理状態に陥る。別れの日、遥からビートルズにまつわる特別の贈り物を受け取る。

 狂った親族から人格を否定され、将来の夢をつぶされ続けた幾夫は、家を飛び出すことに成功する。

 社会に出て家庭を持ち、人生の節々でビートルズと交錯する。中学2年でビートルズを知った「イエスタデイ」、高校1年で鳥肌が立った「レット・イット・ビー」両曲を作り歌ったメンバー、ポール・マッカトニーを、間近で見る機会に恵まれる。

 子を成し父となり、それなりの幸せを獲得したはずの幾夫は、狂った親族による介入を経て、再び人生を暗転させる。妻子を失い職を奪われ心を弱らせ、17年ぶりに実家の門をくぐった幾夫を待ち構えていたのは、精神の異常さに磨きをかけた母だった。

 母との和解をあきらめ、幾夫は東京に戻る。

 歳月が流れ、幾夫と同じように幾夫の母方親族から虐げられ続けた父がこの世を去る。母は幾夫に謝罪もせず反省もせず、それらの必要性さえ理解せぬまま認知症を進行させる。静子の電話で遥からの贈り物を幾夫が思い出したのは、そんなころのことだ。

 贈り物には、仕掛けがあった。幾夫はそれに気づかず40年を過ごした。遥はおそらく、幾夫の苦しみを見抜いていた。そしてきっと遥も、幾夫や幾夫の母親と同じように苦しんでいた。
壱 親ガチャ
2023/12/31 01:00
弐の3 猿芝居もうやめろ
2024/01/03 00:00
弐の4 女子が好む折り方
2024/01/04 00:00
弐の11 音楽室詣でやめる
2024/01/11 00:00
弐の17 もし生きてたら
2024/01/17 00:00
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