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魔法学園の片隅で、先生に玉砕覚悟で告白したらプロポーズされました  作者: 春風悠里


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3.告白

「先生……」

「ん?」


 今こそ告白する時だ――そう決意したら、心臓がドキドキとうるさく鳴って、手足が震えだした。

 先生にどうしたのかと心配される前に、言わないと……!


「わ、わ……私は、ウィリアム先生が好きです」


 言った!

 言ってしまった!

 もう時間は戻せない。私の口から出てしまった。


 いつもと同じ二人だけの場所のはずなのに、違う世界に飛んでしまったようだ。

 相変わらず空は青くて、太陽の陽射しも私たちを照らしたままなのに、いつもとは違う空気が流れている。


 先生が私を凝視して……一度目をそらし、もう一度私を見た。


「そっか、ありがとな」

「……先生、軽すぎます。私、真剣なのに」

「ああ、いい思い出ができたよ。ありがとう、元気でな」

「……知ってましたよね。それで、断ろうって思ってましたよね」

「はは、今だけタメ口じゃなくなるんだ。……ああ、さすがにこれだけ来ていたし、そうかなとは思っていた。先生ってのは格好よく見えるものだよ。教える立場なんだから。この場所にいなければ、ただのオッサンだ。でも、ありがとな」


 私の言葉が、まるで響いていない。

 どれだけ好きなのか、伝わっていない。


 それなのに、なんて言ったらいいのか分からない。


「そんなのっ……、先生、酷すぎます……っ」


 涙がこぼれていく。

 どう言えば伝わるのかが分からなくて、嗚咽が止まらない。


「フローラ……」


 先生が、私の名前を呟いて立ち尽くしている。


「私、先生と会う日だけが救いでした。私が私でいられる場所で……先生は私が話しやすいように気遣ってくれているだけだと分かってはいたけど、でも気になって毎日見ていたら、わざと下手な授業をしているのかなって、他の先生が腫れ物扱いしているのにも気づいて……っ」

「……え、いや、それは……」

「何か、あったんですよね? 昔のさっき言っていた女生徒のことなのかは分からないですけど。いつも私がここに来るまでは空を見ていますよね……、苦しそうに。校舎からわざと目を離して」

「うわ……」

「全部、私の勘違いかもしれません。でも、そんな先生を見ているうちに、もっともっと気になって気になって……いつの間にか好きになっていました。無理だと分かっているのに、先生が私の救いになったように、私が先生の救いになれたらなんて……妄想して……」

「そ……、そうか……はー……恥ずいな……。お前、結構見てんだな」


 先生が焼却炉にもたれて、口を覆った。


「あーあ」


 そう言って、もう一つ煙菓子を口に入れると、虹色の煙を吐き出した。

 レアな、当たりを引いたのね……。


「戻ってくるまで、私待ってるから。卒業したって、何度も学園に確認する。戦況が悪くなって、募集が広がれば私だって戦場に行く」

「それはやめろ。何があっても生きていてくれ。できれば、優しい男と結婚して子を成して、幸せに暮らしてくれ」

「私は先生が好きなんです! そんな振り方、酷い……。絶対に結婚しない。絶対に待ってる」

「お前……言葉なんてのは自分への呪縛だ。お前は優しい奴だから、守ろうとしちまうだろ。そんないらん約束を。絶対に待つな。気持ちは嬉しい、ありがとな。でもお前は俺に振られたんだ」

「認めません!」

「ええ……」


 自分でも何を言っているのか、分からない。

 でも最後なら、思い切り我儘を言いたいと思った。


「先生が私のことをなんとも思っていなかったとしても、無事を確認するまでは誰かと付き合ったり、結婚なんてしないから!」

「なんだそりゃ……しょーがねー奴だ。本当に、しょーがねー奴」


 ふてくされたようにそう言って、頭を抱えた。バツの悪そうな顔を私に向けて、ふっと吐き出すように苦笑する。


「俺にとってもさ……、お前は救いだったよ。さっき言ってた女生徒の変化は、教室でも感じていたんだ。俺は教師になったばかりで若くて……、放置しちまった。あいつを殺したんは、俺だ。同じ恋でも……健康的で可愛い顔を向けてくれるお前に、救われていた。この世界の力を引き出すのに信心は必要だが……そんなものなくたっていい。ずっと弱いまま、安全な場所で守られていてくれ。俺も……この国を、お前の居場所を守るから」


 私は、先生を救っていたの……?


「そんな言葉で誤魔化されたりしない。先生の無事を確認するまで、誰とも結婚はしないんだから! だから……戻ってきて生きていたら、必ず学園にそう伝えて……」

「はー……まったく、しょうがねーなー。そんなすぐ終わるもんでもねーのに……」

「だからこそ、でしょう」

「しょうがねー、ほんっとに、ほんっとに……しょうがねー……」


 同じ言葉を何度も何度も繰り返した後に、躊躇うようなそぶりを見せながら、先生が懐から何かを取り出した。

 それは、お菓子なんかじゃなくて……。


 高級感のある、上品なケースだった。

 指輪やイヤリングなんかを入れるような……。


「え……、先生?」


 ガシガシと髪をかきながら眉をしかめつつ、先生が口を開いた。

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