出された結論に。
度々ミンタナ伯爵令嬢様の嫌がらせに、私は徐々に疲弊しておりましたが、ジェイコブ様はそんな私に気付く事なく平然とミンタナ様も含めた友人方と出かけられたり勉強会をされていました。
時に私もご一緒する事もあり、ジェイコブ様は満足そうにされていました。
そんなジェイコブ様の仲の良い友人方のお一人である、エイヴィス伯爵令息様が別行動されるようになりました。
周りへの気遣いができ、人当たりも柔らかいエイヴィス伯爵令息様でしたが、ある日を境にミンタナ伯爵令嬢様とぶつかるようになりました。
エイヴィス様は何度か何故急に自分を無視し、自分を遠ざけるのかと問い詰め、ミンタナ様はそんな事はしていないと反論されています。
しかしながら、そこまで親しくない私でも、お2人は元々仲が良く一緒に過ごされている所を良く拝見しており、最近ぱったりとそれがなくなった事を存じております。
悄然とされるエイヴィス伯爵令息様を放っておけず、ジェイコブ様と3人でお昼や放課後を過ごすようになり、様々なお話を伺いました。
やはり、私はミンタナ伯爵令嬢様にとても嫌われているようですが、理由は不明でした。
彼の方曰く、私は女性を武器にジェイコブ様や他の方々に迫っていると仰っていたようですが、正直なんの話なのかさっぱり理解できません。
エイヴィス様の説明では、季節ごとのお祝い等で皆様にお菓子などをお裾分けした事や、ジェイコブ様が研究で忙しい時に差し入れを行った事についてのようでした。
正直、お菓子はあくまでもジェイコブ様や家族へのもののお裾分けでしかございませんし、ジェイコブ様に差し入れを持って行くのは婚約者として問題のない行動だと思います。
私が理解できず、困っているとエイヴィス様は苦笑して「分からないのが普通だよ」と仰ってくださいました。
そして、なんとエイヴィス様はジェイコブ様に如何にミンタナ伯爵令嬢様が悪意を持って私とジェイコブ様の邪魔をされていたのか説明してくださりました。
ジェイコブ様は本当に気付いていなかったようで、改めて私に謝ってくださいました。
そして、ミンタナ伯爵令嬢様とは極力関わらないようにすると誓ってくださいました!
私は本当に嬉しくて、謎の悪意と嫌がらせに晒されるのは本当に辛かったのです。
ジェイコブ様は元々他者に関心が薄いようで、ミンタナ伯爵令嬢様は居ないものとして扱うようにされるそうですが、極端な反応にちょっと戸惑いました・・・。
反面、最近ジェイコブ様は私に対して好意的に動いてくださることが多く、本当に幸せです。
ジェイコブ様との仲も育ち、最近は恋人と言って差し支えないようになり、私も改めてジェイコブ様をお慕いしております。
ただ、ジェイコブ様はジェイコブ様です。
研究に没頭されたり、依頼されての研究が入ったりしていて、とても忙しくされているため、私は差し入れを持って行ったりジェイコブ様の話を伺ったりしています。
そんな幸せを壊すのはやはり、ミンタナ伯爵令嬢様でした。
今、私の目の前でジェイコブ様とミンタナ伯爵令嬢様がお2人だけで学習室で仲睦まじく過ごされています。
親し気な雰囲気に私には割って入る勇気はございませんでしたので、音を立てずに立ち去ろうとするとジェイコブ様に気付かれてしまいました。
「あ、シシリー!ちょうど良かった!」
なにがちょうど良かったのか分かりかねますが、声を掛けられたら無視する訳にいきません。
振り返ると笑顔のジェイコブ様と、やはり厭らしい笑みのミンタナ伯爵令嬢様。
私は引きつらないように笑顔を浮かべ、対応できているでしょうか・・・。
「ジェイコブ様、どうなさいましたの?」
「ねえ、シシリー。ミンタナ嬢が困っているんだ、手伝ってくれないかい?」
「そうなのでございますか?
・・・大変申し訳ございませんが、私は本日早く帰宅するように申し使っておりますの」
「そうなのかい?」
「ええ、ジェイコブ様にもお父様から連絡が行っているかと思うのですが」
案の定ジェイコブ様はお忘れでしたが、本日は当家晩餐会の予定となっております。
苦い顔をしつつも、遅れずに行くと仰って下さったので、私はその場を辞して帰宅しました。
ジェイコブ様は約束通り、遅れることなく晩餐会へいらして下さりました。
和やかに時間は過ぎ、帰宅前に私の部屋でゆっくりと話してからいつも帰られますので、今日も私の部屋にいらしています。
ですが、今日は学園での事がありましたので、私はそんな気分にはなれませんでした。
「ねえ、シシリー。何がそんなに気にかかっているの?
俺はあまり敏くないので、君がちゃんと話してくれないと分からないよ?」
ジェイコブ様は本気で、何故私が怒っているのか分からないようでしたので、あまり淑女らしくはございませんが全て申し上げました。
ミンタナ伯爵令嬢様の厭らしい笑顔、理由分からず嫌われている事、ジェイコブ様との仲を邪魔されるような行動、そしてそもそも極力関わらないとのお約束はどうなったのかと。
ジェイコブ様はしばらく考えると、こう仰いました。
「ねえ、シシリー。俺はやりたい事が凄くいっぱいあるんだ。
そして時間は全く足りないんだ。人生は短い。
だからね、正直俺にとってミンタナ嬢はどうでもいいんだ。
けど、下手に問題を起こすと余計に時間が取られるから、それなら適当に対応した方がいいと判断したんだ。
それでも、君が嫌だと言うなら、彼女は排除しようか?」
真面目な顔でとても物騒な事を仰います。
唐突過ぎてついていけないのですが、ジェイコブ様はいい笑顔で「だって時間は有限だし、どうでもいい事に時間を取られたくないしね」と私を抱き寄せます。
私はきっと、ジェイコブ様に大切にされているんだと思います。
それはとても嬉しいのですが・・・漠然とした不安を感じます。私は本当にこのままで良いのでしょうか?
甘く口づけられつつ、不安が膨らみました。(未婚なので口づけまでです)