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超人ストリートファイト

『ドロドロの何か』......もといヒドロの説明によると、私はヒドロの『宿主』となってしまったらしい。


トラックの運転手を食べたように、ヒドロは人間を喰らう生命体だそうだ。ヒトの脳を喰らい続けた結果、ヒトの言葉が喋れるようになったという。


ヒドロは他生物に寄生し、宿主を操って同族を喰らう。犬に寄生すれば犬を、魚に寄生すれば魚を喰うのだそうだ。


「とりあえず、場所を変えよう。見つかったら大変だ。」


骨ごと運転手を喰らったため死体は残っていないが、地面にこびり付いた大量の血痕は残っている。見つかると面倒だろう。私は周囲を確認した後、その場から離れる事にした。


「ここまで来れば大丈夫かもね。それで、1つ聞きたいんだけど、あなたは人を喰う生き物なの?人以外を食べるって手段は無いの?」


誰もいない、半分忘れ去られている小さな公園のブランコで、私はまくし立てるようにヒドロに質問をした。


「まぁできなくはないな。だが、あの状況であの男を喰ってなけりゃあ、お前さんは死んでたぜ。瀕死の肉体を再生させるためには、大きなエネルギーが必要だった。.....共食いは嫌なのか?」


「当たり前でしょ。」

「そうなのか。蜘蛛クモ蟷螂カマキリなんかは普通に共食いをしていたぜ?」

「生き物によって感性はそれぞれなのよ。一緒にしないで。」

「そうか.....。」


ヒドロは一応、反省の様子を見せているようだ。


「もう1つ。アナタは何で、私を助けたの?」


追加の疑問。

ヒドロは何故、死にかけの私を助ける必要があったのだろうか。

偏見だが、共喰いもモノともしないコイツが人情だけで私を助けるとは思い難い。


「あぁ。実はある目的があって....」


ヒドロが口を開こうとしたその時、空気がピンと張り詰めるような感覚。

何かは分からなかったが、私は直感的にその場から回避した。


バチッ。


直後、一瞬のフラッシュが光る。私がいた場所の地面が黒く焦げ、灰色の煙が揺らいでいる。


一体何なんだ?


先程まで自分がいた場所を眺めていると、視界に入ってきた存在に気が付いた。

顔を上げ、こちらに近付く二人組を見る。


シルエットだけで見れば女性かと見間違えるようなロングヘアーの男性と、逆立った金髪の男。どうやら、友好的な雰囲気では無さそうだ。


「逃げ切れたつもりだったかい?残念だね。」


ロングヘアーの男が口を開く。

若干気取ったような喋り方に、何となくイラッとした。


「僕の能力は『千里眼』。どこまで離れていようと、君を見つける事ができるのさ。」


超能力者か。


とある宇宙生命体が存在していた。それがこの星に落ちた事が原因で、人類の一部に異能の力が発現した。

その宇宙生命体はもうこの星から絶滅したとされているが、歪んだ人類の遺伝子は元に戻ることなく、今でも異能の力を持つ者が存在している。それが『超能力者』だ。


物体を発火させたり、身体を膨張させたり、果ては時間を止めたり戻ったりする能力者までいるそうだ。

超能力者が現れた最初の頃こそ『異常だ』とされ虐げられていたものの、今では人類の大きな武器として活用されている。


その『千里眼』とやらで、先程私が.....ヒドロがトラックの運転手を食った所を、目撃していたという事か。

あくまで自分が悪いわけではないと信じてはいるが、舌打ちが出てしまう。


「君が姿を変え人を喰らっている所を目撃しちゃってね。ファンタジスタとしては黙ってられないだろう?」


しかも、ファンタジスタか。さらに舌打ちが増す。


並の人間では対処が難しい凶悪な殺人鬼や異能力者を対処する、いわゆる中世に存在した傭兵的な立ち位置だ。

国から任命された超能力者のみがファンタジスタを名乗る事を許され、自治活動を認められる。


問題なのは、そういう相手を対処するためのファンタジスタは、かなりの戦闘力が存在する事だ。

千里眼の奴は戦闘要員では無さそうなので、もう片方の金髪が先程攻撃を仕掛けてきた奴か。

視線を向けると、奴は好戦的な目を返してきた。


「『稲妻のゲンジ』だ。ま、今から倒されるお前にとっちゃあ、知る必要もないか。」


ゲンジと名乗った男の周辺に静電気が走り、パチパチと鳴っている。


ゲンジが腕を向けるよりも早く、私はバックステップでその場を退いた。

先程のように空気が張り詰める感覚と、フラッシュ。

私がいた場所に、再び灰色の煙が立っていた。


自ら名乗っていた名前から察するに、コイツは電気か何かを自由自在に操る超能力者だろう。攻撃は単調で、避けやすい。


しかし.....


「逃げてばかりか?」


その通り。

コイツの一瞬で飛んでくる電気を避ける事に精一杯で、奴に接近する事ができない。


「参ったな.....初陣でここまでの奴が出てくるとは」

「ちょっと!何でアナタが弱気になってんの!」


困った声を出したヒドロを叱責しているうちに、再びゲンジの電撃が飛んでくる。


「ちっ!」


再びステップで回避。

私がゲンジの稲妻を避けているうちに、ヒドロは相手を観察していた。


「なるほど、ねぇ。」


ヒドロが何かに気が付いたようだ。

さっさと教えろと言わんばかりの顔をしていたのだろう、私の顔を見たヒドロはすぐさま実行に移し始める。


「いくら俺様の能力を得たとはいえ、アンタは非力な人間だ。こっからは俺様に任せな。」


ヒドロの声が、私の意識に流れ込む。

体が動かない。と言うより、私の体は何者かに操られたかのように動いていた。


あの時の...トラックの運転手をヒドロが喰らった時と同じ感覚。

私の肉体は、ヒドロの外皮に覆われ、再び乗っ取られていた。


「な、なんだぁ!?」


困惑した声を上げるゲンジを無視し、ヒドロに乗っ取られた私の体が走り出す。

迎撃するように放たれた電撃を、ローリングで回避。

焦りによる攻撃を難なく避けたヒドロの左手は、拳を握りしめていた。


「飛べッ!!」


顎から脳天に突き上げるような、強烈なアッパー。

見ているだけで痛そうな一撃を食らったゲンジは、マンガのように真上へと打ち上げられた。


「その電撃、どうやらむやみに連射はできねぇようだな。一撃一撃が強力な分、避けられちまうと一気に危うくなる。」


コイツが馬鹿でよかったぜと呟いたヒドロは、変身を解除しながら落下しているゲンジを眺める。

私の姿に戻るとほぼ同時くらいに、トドメとしてゲンジの腹部に鋭い横蹴りを放った。

縦方向に落下していたゲンジは横方向に吹き飛び、コンクリートの塀に激突。瓦礫が宙を舞った。


「射撃ゲームでもして、命中力を鍛え直してくるんだな。」


ヒドロがそう言い放つと、私の意識は再び肉体に帰還した。

何とも言えない感触を感じながら、私は自身の体を確認するかのように動かす。


「.....んな.....とで...。」


!!


ばっと振り返った。

ゲンジは瓦礫を踏み、再び立ち上がっていた。

私は助けを求めるようにヒドロに意識を向けるが、気付いていない様子。


「能力者として生まれた俺には....悪い能力者を倒す責務がある......!俺は....負けねぇ.......!!」


ゲンジの身体が光に包まれ、バチバチと破裂音を掻き鳴らす。

体全体を、電気で覆ったのか。


「安心しな。奴はもう、俺達には勝てねぇ。」


私の意識を遮ったのは、ヒドロの言葉だった。

気付いていたのか。

だが、「もう勝てない」とはどういう事だ?


私が疑問に思うよりも早く、その結論は出ていた。


電気を纏い、こちらに向かって突進したゲンジだったが、私の目の前で動きを停止。

そのまま、仰向けに倒れてしまった。


「コイツが、俺の能力。」


困惑する私に、ヒドロが解説を始める。

ゲンジは全く動かなくなっていた。


これは一体。



「『テトロドトキシン』。筋麻痺、呼吸停止、感覚、運動機能、視覚喪失を引き起こす猛毒さ。」


ヒドロは背を向け、死を宣告するようにそう言った。

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