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毒薬変じて薬となる

R15の所を押したはずだけどなってるかどうか不安なので一応グロ描写あるから気を付けてねって注意書きしときます.....

多数決が、嫌いだ。


集団の中で意思決定を図る際に、多数派の意見を参考にする方法。



私のような少数派の意見は、切り捨てられるからだ。


仕方が無いのは分かっている。集団の中で生きるのであれば、多数派の意見を優先した方が話が進みやすいし、衝突も起こりづらい。少数派の方が、意見の抹殺がしやすいから。


だから私は、集団の中で生きる事を辞めた。





耳をつく喧騒(ノイズ)の中を、窮屈そうに体を捻ってすり抜ける。他の生徒に一瞬引っ掛かったセーラー服の襟が、ふわりと浮いた。


廊下を溜まり場にして占拠する男子(バカ)共も、横一列に並んで道を塞ぐ女子(バカ)共も、全員嫌いだ。



私は人よりも、嫌いなものが多いんだろう。他の奴等は、私の嫌いなものを好んでるのだから。

ポケットからイヤホンを取り出し、耳に装着する。周囲を取り囲む喧騒(ノイズ)から、逃れるために。


私の好きな曲は、いわゆる『マイナー』な曲らしい。皆は、クラスメイトが飽き飽きするほど教室で垂れ流している、ネットだかSNSだかで話題になったような曲ばかり聴いているから。


皆が同じようなものを好きになって、周りに合わせて同じように動いている。そんなんだから、私はクラスメイトの顔を全然覚えられない。と言っても、覚える必要もないか。


誰よりも早く校舎から抜け出し、自転車置き場に駆け込む。早く帰らないと、校門前やこの辺りも生徒達(バカども)に占拠されてしまうからだ。


鍵を開け、自転車に跨る。

私の自転車は電動だ。重い鞄を背負った疲れた状態でも、負荷なく帰ることができる。風を切って素早く校門を抜け、道路に出た。


いつもと変わらない、同じ帰り道。最初は色々な道を試していたのだが、最終的にこの道が信号機のタイミング等で、最もスムーズに帰れるだろうという結論に至った。この調子であれば、あと15分程度で家に帰れるだろう。


小道に入り、ハンドルを握った。

ブレーキをゆっくりとかけて徐々に減速をしていく。

十字路で一時停止し、道路を横切ろうとしたその時だった。


──────────ッ!


突然。

凄まじい衝撃が私を殴打する。

その瞬間、周囲の時間がとてもスローに感じられた。

まるでアクション映画のワンシーンのように。


ゆっくりと流れる時間の中で、私を横から殴ったのは、巨大な2トントラックである事を確認した。


「あ.....私は死ぬのかな。」


スローモーションの世界で、直感的に頭に浮かんだ感想はそれだった。

直後、スローの世界は終わり、私は地面に叩き付けられる。


流れに逆らえぬまま転がり、投げ出された私の体は重力に引き止められる。


「う...うぅ......」


打ち所が良かったのか、それともアドレナリンというやつのおかげだろうか。

全身に圧を感じたが、痛みはあまり無かったのが不幸中の幸いだ。


擦ったのだろう。脇腹から地面を這うように垂れ流れている血液を、ぼんやりとした意識の中で見ていた。


プレス機でみしみしと圧迫されるような感覚を覚えつつ、顔だけを持ち上げて周囲を見る。

ぼやけた視界の中で視認できたのは、少し前方で若干減速している私を轢いたトラックと、驚愕の表情を魅せる通りすがりの老人。


そして.....『ドロドロの何か』。


「......?」


地面に叩き付けられて頭がくらくらしているのに、何故かその『ドロドロの何か』に不自然と意識が吸い寄せられた。

まるで美術品に何かを感じ取った人のように、私はその『ドロドロの何か』を無意識に見ていた。


『ドロドロの何か』は私に近付きながら、独り言を呟いている。

次第に『ドロドロの何か』から表情が見えてきた。

それは、笑っているようにも見えた。


「見つけた。」


奴はそう言うと、横たわって意識が朦朧としている私に一つ、提案をする。


「なぁお前。生きたいか?」

「......?」


唐突の質問に、私は回らない頭を精一杯使って答えを考えた。

正直、私はこの世で生きていくのに向いていない性格だと思う。

他人に合わせるのが大嫌いだし、多数派の意見ばかり採用される集団生活も嫌い。早々にこの世界から退場した方が良いと、常に思っていた。


しかし、今こうして生命の危機に瀕した時。


直感的に『まだ死にたくない』と思ってしまった。


確かに、私は生きるのに向いていないと思う。人であるにも関わらず人と関わるのが嫌いだし、いつだって認められない少数派だ。けど.....


このままくたばるのは、『少数派は排除されるべき』という多数決の原則を、認める事になってしまう。

そんな気がしたからだ。


私はゆっくりと口を動かし、『ドロドロの何か』を睨みつける形で言う。


「生き.....たい。」

「....いい返事だ。」


その言葉を聞いた『ドロドロの何か』は、ニヤリと笑った気がした。次の瞬間、奴は視線を変え、血が流れている私の脇腹へ突進。

直後、まるで奴は私の体内に入り込むように消滅した。


私は体に違和感を感じ始める。

キリキリと全身を押さえつけるように感じていた『圧』が、みるみるうちに引いていった。

痛みは無いながらも感じていた『怪我をしている』という自覚も薄れていき、脇腹の血も気付けば止まっている。


何故?

私はそう疑問に思うよりも先に、激突した際に捻ってしまって動けなかった腕を動かした。

地面に向かって腕を立て、上半身を持ち上げる。

同じくらいのタイミングで、こちらに駆け寄る足音が聞こえた。


「アンタ、大丈夫かぁ?」


若干のすり足で駆け寄ってきた者は、先ほど私を轢いたトラックの運転手だった。

私を轢いた後、少し前で停車し、こちらに来たようだ。


「大丈夫.....です。」


大丈夫じゃない。

けど、全身から痛みの無くなった私は自然とそう口にしていた。

下手な面倒事は起こしたくないと思ったのもあるだろうか。


「まったく、気ぃ付けてくれよ?」


トラックの運転手は地面に座り込んでいる私に苛立った様子でそう言い放つと、その場を去ろうとする。

何故。きちんと交通ルールを遵守し、轢かれた側の私が怒られなければならないのだろう。


私がそう直感的に思った瞬間、私の体が無意識に動き始めた。

顔を上げ、こちらに背を向けてトラックに戻ろうとする運転手を眺める。

まるで私が抱いたほんの僅かな黒い感情が、私の肉体を支配しているかのように動き始めた。


若干駆け足で走っていた運転手は、地面に落ちていた泥のようなものを踏んづけて転んだ。

それを見た私の体は、意思に関係なく立ち上がる。


いけない。


何故かそう思った。

しかし体は意思に反し、トラックの運転手に向かう。


「なんっ.....うわあぁっ!?」


気配を感じて振り返った運転手は、私の姿を見て驚愕の表情を浮かべていた。

まるで、化け物でも見るかのような目で。


それはその通りだった。

気付けば、私は異形の姿と化していたのだ。

ドロドロの液体に身を包んだ、人型ながらクリーチャーのような顔をした怪物に。


異形の姿と化した私は相変わらず言う事を聞いてくれず、勝手に体を動かしていた。

運転手の頭を鷲掴みにすると、焦げるような音を立てて運転手の頭から煙が出る。


溶けている?


次の瞬間。

私は悲鳴を上げる運転手を、喰らっていた。


頭から喰らった。そのため運転手の悲鳴は無い。状況が飲み込めず呆然としている私の意識を差し置いて、異形と化した私は運転手を貪り食っていた。


血を撒き散らしながら貪欲に人を食すその姿は、野生の獣そのものだった。


運転手を完食すると、私は意識と肉体が再び結合するような感覚を覚える。見てみると、全身を覆う黒い泥が剥がれ落ち、元の姿の私が立っていた。


「何?今の.....」


誰に言うでもなく、率直な疑問を呟いた。するとそれに答えるように、私の後ろから何かが目の前に飛んでくる。


先程見た『ドロドロの何か』だった。奴は私の呆然とした顔を見ると、ニヤリと笑みを見せる。


「何......?」

「『生きたい』って言ったじゃねぇか。ほら、肉体は元に戻ってる。」


そいつに指摘され、私は自分の全身を見る。

傷があったのが嘘のように戻っており、痛みももう存在しない。


「俺の名はヒドロ。よろしくな、『宿主』さんよ。」


未だに状況が掴めない。

だが、1つだけ分かることがある。



私の命を救ったのは、どうやら化け物だったみたいだ。

読んで頂きありがとうございます。

トラックの運転手ってプロのドライバーかつ大型のものを扱っていて運転に人一倍気を使っているから事故を起こすって導入は少々無理があるのでは?と思われそうなので言い訳を書いておきます。

私、中学生の頃に一度トラックに轢かれており、大きな怪我こそ無かったもののその体験は鮮明に覚えています。マジで一瞬世界がスローになります。

軽自動車に轢かれたことはないがトラックに轢かれたことはある!って事でよりリアルな描写が書けるかな~ってトラックに轢かれるシーンにしたのですが、トラックに轢かれて異世界転生~みたいな作品があちこちで出没しているのを知った上で後々見るとやっつけ感が凄いですね.....

まぁ大丈夫でしょう!亜○の主人公もトラックに轢かれて○人である事が発覚していた(おぼろげな記憶)し!

クソ長い言い訳を最後まで読んでくださりありがとうございました。これからもヘドロドトキシンをよろしくお願いします!

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