第7話
そう言えば今夜は何故火を焚いてるかと言うと
今日は新月なのだ
俺達の拠点は小規模な山
都会の中にある自然を保護する為に残っている山だ
そんな所にあるから、新月になると都会の喧騒と街灯の光も届かないこの場所では
1m先の相手の顔も月の光が無ければ見えないから今日に限っては灯りを点けるのだ
そして、新月にわざわざ定期報告をしてるのも意味があるらしい
「タイガ良いか?新月は奴らの時間だ。光があれば影がある当たり前だな。そして影の連中にとっては光は極上の餌であり、エネルギーであり嗜好品だ。月の光が無い日は1番影の力が強まるから絶対に出てくる。月の光は太陽の光の反射だからなお天道様は鎮魂や破邪の光って事だ。反射光だから多少弱くなっているけどな」
俺は、その話を聞いて
ゴクリと喉を鳴らしていた、そう昨日は件の出現で有耶無耶になったが今日は
化け物との戦闘が避けられないという宣言でもあったのだ
「今からそんな緊張状態だと疲れるぞ。奴らの時間は夜だがアイツらだって捕食するのに楽したいから出てくるのは丑三つ時がほとんどだ」
ケラケラと笑いながらカクさんは酒をかっ喰らう
「シエさん、カベさん俺…丑三つ時って何時なのかわかんないんすけど」
頬をポリポリと掻きながら2人に質問する
口をポカンと開け目を真ん丸に見開き驚く2人
「おいおい、マジかよタイガ今位の子達は丑三つ時が何時か分からないか…大体だけど深夜2時~4・5時だな。季節によっては明るくなり出す時間が変わるからその辺は曖昧だ。まぁ、寺や神社では深夜0時を超えたらもう妖の時間って言われるけどな」
カベさんが優しく教えてくれた
「まぁ、夜はだからこそ奴らの苦手な塩や酒を飲むんだけどな。まぁ、奴らの中にも塩も酒も好きな奴が居る会話が成立する奴も居ればこちらから奪う事しか考えない奴も居るわけだ。厄介だぞー昔の陰陽師達はこういう奴らを仲間にしたのが式神って奴だな」
オカルト大好きな俺には凄い知識欲を掻き立てる話ばかりで俺はホームレスになって良かったかもしれないと今思っていた
「400~1000年前なら俺達もお金持ちだったかもな?」
カクさんがケラケラ笑いながらそう囃し立てる
「あー確かにそうかもしれませんね。化け物、妖退治でお金貰えてましたね」
「そういう事よ!」
そんな話をしていると、シエさんが立ち上がった
「リーダー!来やがったぜ。カベ準備だ」
俺は慌てて立ち上がる
「今日は、異界を広げずに迷い込んだか捕食に出てきた奴だな。どこに向かってる?」
カクさんは落ち着いた様子で状況を確認してる
「多分、話し声でこっちに気付いた!ゆっくりだがこちらに向かって来てるな」
「なぁーにー?俺の酒を狙ってんのか?」
いや、違うだろカクさん!?
ほら、カベさん、シエさんも苦笑いしてるやん
「タイガ今日は、参加しなくても良い。その代わりその刀、会敵したら抜けそれだけでも良い経験になる。カベはタイガのフォロー。シエは結界支援を頼むぞ!」
「「あいよ」」
カクさんが1番先端に行き、その斜め後ろにカベさんが俺の前に立ち
最後尾にシエさんが立つ
ガシャ…ガシャ、ガシャガシャガシャ
何か、乾いた木同士を叩き合わせた音が鳴り響く
「来なすったぜ。起きろ蒼鬼」
そうカクさんが言うと、カクさんが持っていた槍の穂先から青色の炎が吹き出す
「タイガ抜いとけ…もう来るぞ呑まれるなよ?雰囲気に」
カベさんはそう言うが俺の心臓はバクバクと大音量の太鼓やビート音が耳の中鼓膜のすぐ横で鳴らされている様だ
最早返事すら出来ない
そんな時、目の前から2m~3m位の巨大な骸骨が現れた
禍々しい、オーラを放ち。
俺は慌てて刀を抜くと、紫色の波紋が流れる綺麗な刃に俺の心はあれだけ荒波に揉まれていたのに今は凪の状態になっていた。
「すげぇ…綺麗だ…」
そんな事を呟いていた
"ありがとう、私も嬉しいわ"
そんな声が聴こえた
「!?!?」
俺は周りを見渡していた
「タイガァァァ!余所見すんな!敵からすれば的だぞぉ!」
カクさんから怒られた、この人後ろに目着いてんのかな?
「ごめん!集中する!」
怒っていた、カクさんは骸骨に対して青色の炎を当てガンガン槍を当てていた
「タイガ、俺は顕現武器と呼んでいるコイツらには意識があると思っている。意識を合わせろ。この武器を扱える人間は大体昔怪奇現象や超常現象に巻き込まれた人間だ。コイツらと今目の前に居る奴は同質の存在だ。人間に害を成す存在か味方かの差しかない」
骸骨が急に動きを変えて、カクさんを殴ろうとするとカベさんが目の前に出て薄く発光した板で骸骨の攻撃を防ぐ
「シエェェ!!」
「おうよ!」
シエさんの体が薄く発光する
「地縛り鉄塊」
骸骨の上から四角い何かが現れ、押し潰している
ギチッギチッと嫌な音が聴こえている
「タイガ最後のトドメはお前がやってみろ?これから先こんなもんじゃない命のやり取りをするコイツは弱い方だ」
そう言うとカクさんは俺の肩を叩き、槍もいつも通りの黒い煤けた穂先に戻してしまった
「無茶ぶりだなぁ、ふぅ」
俺は深呼吸をして、目を瞑る
暗闇の中で、波紋の様に相手の力の波動を感じる
シエさんの出している物が上からの圧力を増やすと、それに合わせ波動も大きくなり、拮抗すると細かく波動が出ている
"あの子の存在に鎮魂を、荒御魂を沈めて差し上げましょう"
幼い様な、妖艶の様な声が聴こえる
"あの子の波動に合わせて波動を出して凪にしてあげて節句はもうわかるわね?"
「あぁ、大丈夫だよ。鎮魂歌」
俺は刀を左手に持ち、骸骨の所まで走り右側から右下から左上に刃先を振り上げ駆け抜けた。
駆け抜けた直後に相手を斬った振動と柄に着いた鈴が
"リーン、シャラン、リーンリーン、シャラン"
と儚くも寂しげな綺麗な音が鳴り響いた
「鎮魂か。おっかねぇな」
そんな場違いな感想を俺は抱いていた。
そんな時にパチパチパチと拍手が鳴った
「良くやったタイガ。まぁたおぞましい力だが間違えた使い方はするなよ?多分俺の顕現武器が全く反応しないって事はお前の武器の意識は女なんだろうなぁ。羨ましいよ」
とカクさんはガックリと項垂れていた
「え?カクさんの武器は…」
「ゴリゴリムキムキの筋肉ダルマって言ったらもうわかるだろ?それに精神世界で修行させられるんだよ。マンツーマンでな…」
ついついおっふと吹き出しそうになった。
ご愁傷さまです。
「ぷっくく、ぶふっ」
あーあーカベさん吹き出しちゃったよ
「カァーベェェェェ、お前覚悟は出来てんだろうな?」
拳をボキボキと関節を鳴らしながらカベさんを追い掛け出す。
遠くで悲鳴が聴こえたが知らん
触らぬ神に祟りなしだよ。
「シエさん、飲み直しましょうか?」
「あぁ、そうだな」
心の中で俺は、まだ名前も聞かされても無い刀へ
"ありがとう。これから先よろしくな"
と伝えると喜色の感情が溢れた様な気がした。
俺は初の敵を倒したのであった
お読み頂きありがとうございます(`・ω・´)ゝ