第15話
「んーそれで俺に聞きたいことは?」
面倒臭いので、スナック菓子を食べながら俺は彼の話の本題を促す
「まずは俺の自己紹介をさせろよ!」
男はいきり立つが自己紹介とか要らんのよ。
君だって最早俺から見たら厄介者なんだもの
「俺は風華様の護衛の楠田だ。俺が聞きたいのは風華様の状況だ」
「クズださん?「くすだだ」あ、失礼。楠田さん風華様?元気よ。火華と楽しく寝てんじゃない?今はどうだか知らないけど」
「なら良いのだが。護衛がそばに居ないとは不味いだろ?普通に考えたらな」
この人何言ってたんだろうか。
ここは言ってあげなきゃわからんのだろうかな?
「あー楠田さん?そもそもさっきの力見てわかったと思うんだけどさ?前に拠点に来た時に認識阻害受けたよね?あれが俺の力ならさ。今拠点に行けば風華に会えるってのは考えなかったわけ?」
ガタッと椅子を引き倒しながら立ち上がる
「言われてみればそうじゃないか。では俺はこれで失礼」
そう言うと楠田は物凄いスピードでスーパーを出て行った。
ポンコツ護衛のおかげでアイツは傷だらけになったのでは?何て思いながら俺は袋を貰い
お土産に、お菓子の詰め合わせと飲み物と氷を6~7人分位用意して
紙コップを貰い
スーパーを出ると複数人の人々が列を成して歩いているのが見えた
「やっぱり東京に残っている人は多いんだろうなぁ」
何て呟きつつも俺はその場からすぐに立ち去る
最近では、人が急に居なくなった為に周りの県下から野生動物も沢山流入して来ているので拠点の近くにある畑を警邏して害獣避けを強化する
「スーパーやショッピングモールはそのうち使えなくなるからな!」
田舎育ちで良かったと思えるのは基本的知識の中に農業の知識が元からあるのだ
そりゃ義務教育期間に毎日見掛けるのだから
9年×365日=約3300日も見てるのだ流石に農家でも無くても知識は入ってくる
拠点に戻る最中に、癖で裏路地を通ってしまう
曲がった瞬間辺りが暗くなった気がするが、それは日が遮られたからかな?って位の気の所為かな位の違和感
しかし、
『タイガ?どこに行こうとしてるの?』
紫霧に話しかけられたが俺は首を傾げる
「は?拠点に戻ろうとしてるよ?」
『お主全く気付かなかったみたいだけど?異界に招き込まれて誘い込まれてるよ?』
指を口の下につけてあざとい表情をするくそ可愛い美少女
そんな照れてしまう笑顔を見て顔をニヤけそうになるのを堪えて
「え?俺また巻き込まれたの?トラブルホイホイじゃないんだけど」
ため息を吐くしかない。
「どうすれば出れる?戻ったら出れるかな?」
『んー?いや倒せばいいんじゃないかな?タイガならいけるよファイトー!』
あざと過ぎるが可愛い…ちきしょー俺が女の子と関わる経験が少ない事はバレバレだから
見事にやる気が出て来ている
「じゃあやっちゃいますか!敵はどこに居る?」
『え?モウ上ニイルヨ??』
「は?上?」
上を見上げると、金棒が上から降ってきていた
このクソ女、マジで何言ってんの?みたいな事を言う時ばっかりホラー映画の幽霊みたいにカタコトで言い放ちやがって
「ほぎゃーー」
変な声を出しながら俺は必死に避けた
「焦った…」
俺は刀を抜き、柄の鈴を鳴らし
波動の察知する為の集中を始める
「はぁ、そういえば紫霧の刀の銘はそのまま紫霧なのかなぁ」
なんて緊張状態から良い感じの気の抜けた脱力が出来ている
「それでコイツは何だろうね?鬼なのかな?」
『生成りじゃないかな?まぁ、成りかけのまま封印されて出てきた感じかな』
「ぶった斬って、成仏させた方が良いんだね」
俺は、居合の型を取る
『眠りなさい』
「鎮魂歌」
金棒を持っている右腕をぶった斬って抜き放った刀を返し
袈裟斬りを仕掛けようとした時
“ガンッキィン“と
刀を弾かれた
『ふむふむ、陰陽師?いや神器に近いが中途半端な奴も居るもんだな?』
ソイツは目の前に現れて声を発する度に
俺に、振動の重圧が掛かっている?と錯覚する程の緊張感がある
「はぁ、はぁ、はぁ、今日はなんだ?トラブルのオンパレードじゃねぇかよ。誰だよ日本の異形の連中は夜にしか出てこない律儀な連中なんて言ったの。何でこんな奴ばっかり出てくるんだよ」
まぁ、言ったのは俺なんだけどね
俺は、汗だくになりながら紫霧を居合の型でいきなり現れた奴に相対するも
出来れば、戦闘は避けたい
さっきから完全に呑まれている理由は簡単だ
何回も死にかけたり死のうとした経験があるからわかる奴に後3歩近付けばそこに死の臭いがある
俺を護る様に2人が現れる
『随分と大物が出てきたわね。タイガあれが本物の鬼よ』
『主様、私に捕まりください。支えます』
「ありがとう。でも今奴から目を離す訳には」
『む?そうか、貴様寵愛を受けし子か。舐めてかかるとこちらが殺られるな。弁慶や、義経も厄介だったからな。すまぬのこの木偶の坊が勝手に表に出て行って戻って来ないと思ったら死にそうになっとるから介入させて貰った。俺は鬼人の白だ。神と不死鳥の愛子よ。貴様とはまた見えそうだから名乗っておこう。貴様の名を聞いておこう』
うへぇ、やばいよ。
弁慶と義経ってあれだよね。天賦の才の集約化された超人と戦闘して厄介で済んじゃうヤバいやつだよ
俺はめちゃくちゃキツかったが見栄を張り完全に虚勢だ
「俺は衣袋大牙だ。白って言ったか。今回はそっちの後ろのでかいヤツに急に異界に引き込まれたから戦闘になっただけだ」
『ふむ?衣袋だと?胃の系譜か?まぁ、良いか。すまなかったの。俺達はこれで帰らせてもらう』
ん?何だ?田舎の苗字に何か意味あんの?
何て言うと白はでかいヤツの首根っこを掴むと音もせずに消えたそれと共に重圧も消えた。
「ふぁ〜…何あれヤバない?死んじゃう心情折られる心そして織られる心の鍵ってね」
『何言葉遊び何てしてんの!あれでも鬼の中で確か上から2、3番目だよ?』
『確かに凄まじき力でしたが我々が力を使えば退ける事は可能かと?』
「あれの上にまだ居んの?無理無理」
『何言ってんの!仏教で1番有名な奴残ってるでしょ?』
1番有名…?もしかして
「閻魔…?」
『知ってるじゃない!あれは強いわよ!』
強いって知ってるって事は隣に居る美少女はどれだけ強いんだろうな
俺はヘトヘトになりながら、あんな重圧を感じた中でも達成感を得ている事に気付く
戦闘狂だったのかと自分の意外な1面を垣間見た気がするのであった
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