第12話
燐音の境界侵入を許可してから10分程経った頃
「火華お嬢様こんな所に来ては行けませぬ」
「良いの!そんな事を言ってる場合じゃないでしょ?」
そんな会話が聞こえて来る
カベさん、シエさん、俺は
カクさんに捕まらぬ位置で逃げる準備を始めた
確実に厄介事が来ましたって空気をビンビンに感じるからな
「あ!居たこう兄!」
火華が30代位に見える女性を肩に担ぎ
後ろに取り巻き2人を連れてやって来た
取り巻きは俺達を見て早速、札?と武器を掲げ戦闘準備に入っている
「こう兄?雷光だと?何故こんな所に術無しが居やがる」
侮蔑の表情を浮かべ、こちらを睨んでいる
雷光と呼ばれたカクさんはヘラヘラ笑いながら
「居やがる?ってお前らが俺らの領域に踏み込んで来たんだ帰ってもらっても一向に構わないんだが?」
あぁ、怒ってらっしゃるよ
巻き込まれたくない、俺達の行動は早かった
「2名様お帰りでぇーす」
俺がそう言うと2人は消えた
「ナイス燐音!」
燐音が嬉しそうに満面の笑みを浮かべているので
褒めて撫でた
『ひゃー主様、私は嬉しゅうございます』
そう燐音は俺に全力で抱き着き、嬉しさを表現する
「え?え?」
全く今起きた事を理解出来ずに辺りを見渡す火華
「ぷっ、タイガお前最高だな!ギャハハアイツら今頃慌ててるだろうな」
太ももをパンパン掌で叩き大爆笑をするカクさん
そして、真剣な表情に戻る
「んで?それで火華今回は何をしに来た?大体の状況は蒼鬼から聞いてるし今のお前の状況を見れば分かる」
そう言うと火華は落ち込んだ表情をして
「お姉ちゃんが怪我をしてね?でも外では瘴気が充満してて傷の治りが遅くてパニックになっちゃって…そんな時にここはこう兄が居るからなのかわかんなかったけど聖域並に神聖な空間が出来てたからここなら治療が出来ると思って」
そう言って、肩に担いで居た女性を降ろす
細かい擦り傷の周りが何か黒く変色している
俺はそれを見て
「変色?侵食かこれは?」
傷に靄みたいな煙がくっついているのだ
それは火華にも付いている
火華も脂汗をかいているな。
「ふむ、姉貴でもダメか。まぁ、術が使えれば勝てる様な相手でも無いしな」
カクさんはそう言って納得している
カベさん、シエさんが傷を確認しているが首を振る
「リーダーこれは俺らには無理です。これは呪詛ですね神の呪いに触れる事は普通の人間には無理です」
カクさんはうーんと唸り悩んだ後、
「蒼鬼!顕現!」
そう言うと、オッサンが出てきた
『無理じゃ!』
一言で一蹴した……
『儂の力は殲滅、傷を付ける力じゃ破壊の権化に呪いを破壊しろと言うのは容易いが呪いを受けている器を壊すこと無く呪いのみは無理じゃタイガとやらに頼れ!』
そう言うと俺を見てくる
「え?俺?無理無理無理…」
俺はそんな責任重大な事をしたくないとばかりに首をブンブンと横に振る
そんな事をしていると急に靄が俺達に向かってくる
『主様に呪詛風情がなんて無礼を』
と俺に抱きついていた燐音が怒り心頭で
ここに居た6人全員を緑の炎で包む
「あったけぇが理科の実験を思い出すな」
カベさんやシエさんがそんな事を言っている
俺はテルミット反応の実験だっけ?なんて思考の脱線をしていると
靄は炎に追い出されて、1つにまとまって人型になるが影の様に見えるがハッキリとは視認出来ない
『そもそも燐音?貴方境界を貼ってるのに侵入されてる事がダメじゃない?』
と紫の髪をなびかせる美少女が俺の横に立つ
『貴方は、この場所に相応しくないわね。還りなさい』
紫霧はそう言うと靄の周り四角の透明な箱が4つ出現して靄を潰してしまった
『相変わらずおっかねぇ力だわ儂の物理破壊がどれだけ可愛く見えるかわからんの』
『まぁね。私の力は正確には自分でも捕らえきれてないわ』
そんな事を言う紫霧は悲しげな顔をしていた
ついつい俺はそんな紫霧の頭を撫でていた
「ありがとう紫霧助かったよ」
と言うと、頬を膨らませ。いじけた表情を見せる
『前に助けた時はいつも怖がってた癖に』
そりゃそうだ、自分が窮地に陥ってもう無理だ死のうと思うと止めに来る少女
怖いわっ!
でも、やっぱ思うのは人間の恐怖の根源は
知らない未知の領域なんだと思う
紫霧の事も知ってしまえば、愛らしい美少女だしな
「悪かったよ、君はいつでも俺の味方だったもんね。俺も君の味方でずっと居るよ」
そんな事を言っていると燐音が俺の隣でうんうん唸っている
「ん?どうした?燐音?」
『あ、いえ主様。先程の緑の炎の技名が決まらぬのです』
俺はそんな事を悩んでいる燐音にズッコケそうになったが
火華ともう1人の女性に視線を向けると傷も治っていた
「なら癒しの炎で癒炎で良いじゃん。安易な名前にも聞こえるけど言葉の響き的には同音異義語で縁や回り巡りそうな名前でもあるからね」
『主様のその案で行きましょう!』
何か、不死鳥の筈なのに燐音には尻尾が見える気がする
ヤレヤレみたいな空気が紫霧からも感じていた
そしてさっきからスマホの警報アラートがバンバン鳴りっぱなしのカオスな現場になっているのだった
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