16-7 クコは立ちあがる
「なんてまっすぐなのかしらね」
ふう、と母さんは吐息をついた。感慨深げにゆっくりと僕とグミをそれぞれ見る。
「私たちが意固地になって、大切なことに見て見ぬふりをしていても、子供たちはまっすぐな気持ちに従って、理にかなった判断をする」
母さんはそっと父さんの肩に手を当てた。
「クコ。あなたが、父さんは引っ込みがつかなくなった、と言ったけれど、それは母さんも同じようなものよ。叔父さんや叔母さんたち大人四人で何度も話しあった上で決めたことだから、間違っていないと思い込んで、ううん、信じたかったのね」
母さん、と父さんは、反対側の手を母さんの手に重ねた。一度深呼吸をして僕の目を見た。
「知らないうちに大きくなっていた。しっかり理路整然と話したな」
そんな、と僕は照れて頭をかいた。尊敬する父さんに褒められてこそばゆかった。
「おまえの言うとおりだ。そのつもりはなかったが、引くに引けなくなっていたのかもしれない」父さんはゆっくりと目をしばたたかせた。「コクーンの制限は父さんが提案したんだ。発案者として責任を感じていた。それに、根拠はないものの、そう遠くないうちに原因を特定できそうな予感があった」
いや、言いわけはよそう、と父さんは首を振った。
「結果、みんなを苦しめた。私自身も見苦しいところを数多く見せた。すまなかった」
「母さんも母親として失格だったわ。ごめんなさい」
「あ、謝らないでよっ」
目を伏せる両親に、僕はあわてて両手を振った。親に詫びられるのは居心地が悪い。
「それよりコクーンとハッチは開放してくれるよね?」
「ああ。もう、無用の意地を通すのはやめだ」
ついに父さんから引き出した。三カ月もの間、待ち焦がれた言葉。
「やったー!」
僕とグミはそろって歓声をあげた。ハイタッチして喜びあう。僕たちはとびきりの笑顔だった。つかみあいのケンカをしたのが嘘のようだ。母さんも顔をほころばせている。あんな優しい顔を見るのはいつ以来だろう。
やっとこのときがきたんだ。どれだけ待ち望んだだことか。胸がじんとする。




