16-3 クコは立ちあがる
「父さんと叔父さんはきっと優れたエンジニアなんだと思う。でもごく限られた人数で原因を見つけだすには、ウラヌスはあまりに大きすぎるんだよ」
「知ったふうなことを言うなと言っている」
「僕たちはもっとウラヌスを信用していいと思う。千年以上もの間、僕たちが宇宙で生存し世代を重ねる環境を維持してきた。偉大なシステムだよ」
「その高いはずの信頼性が揺らいだんだ」
「ウラヌスの自己診断機能では異常はまったく検出されないんだよね? 僕もマニュアルを見ながら試してみたよ」
「高度な自己診断を実施するには相応のスキルがいるんだ。真似ごとでえた簡易的な結果など意味はない」
「そうかもしれない。でもそのとき読んだマニュアルに、ウラヌスの自己診断能力の高さが特筆してあった。さまざまの異なったアプローチで評価して、乗員の安全を脅かす可能性は確実に検出する。数多くの技術者、研究者が膨大な検証を重ね、非常に高い信頼性が保証されているって」
「その前提が崩れた」
「僕はこう考えてるんだ。乗員の身の安全はなにがなんでも最優先で保障する、その代わりそうでない範囲のまれな異常は許容しよう、そんな思想で設計されているんじゃないかと」
「ハッチのトラブルは安全上、問題だろう」
「ダクト内に人がいればね。でも、異常は無人のときに起きてる。人命に害のおよばない範囲のことだった。ハッチの件は、父さんたちも経験したことのないほどのレアケースだし、その後は復旧もしている。ウラヌスの信頼性はやっぱり極めて高いと考えていいはずだよ」
「都合のいい解釈だ。たまたま人がいなかっただけだ」手厳しく父さんは指摘する。「ありえないことが起きた以上、慎重にならざるをえない。特にコクーンは死の危険もある装置だ。とりわけ命を落とすバグが潜んでいたなど言語道断。発見の時点で禁止すべきだったんだ」
「そこは僕も弁護しかねる」フォローできない部分はすなおに認めるしかない。




