88/203
15-3 蝕まれる家族
「ふんっ。何百年、なにも起きずに航行してると思ってるんだ。今夜に限って起きるものか」
「船団の規模はなんらかのアクシデントで四分の一になったわ。残った船にもハッチのトラブルが起きている」
「だめなときはなにをやってもだめだ」
吐き捨てるように言って、父さんはグラスをあおった。
なんて無責任な言い草なんだろう。父さんらしくもない暴言だ。こんな姿、見たくなかった。
「あなたとも思えない言葉だわ。私と飲みに行ったときにそんなに飲んだことないでしょう」
「ひとりのときだってないさ。それだけ飲まなきゃやってられないということだ」父さんは逆さまにしたグラスの雫を口で受け止めて、母さんに差し出した。「おかわりを持ってきてくれ」
「水を汲んできて頭からかけてあげましょうか?」
「ははっ。そんなかりかりするな。君も飲んだらどうだ。このところの憂さが晴れるぞー」
「ふざけないでっ」
「融通がきかない奥さんだな。なら自分で行く」
父さんはよろめいて立ち上がりキッチンへ行こうとする。その手首を母さんがつかんだ。




