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15-1 蝕まれる家族
船内の雰囲気は日増しに悪化した。グミは僕と目も合わせなくなり、父さんと母さんの僕に対する監視の目も厳しくなった。
ふたりは僕を問題児扱いし結託している、と僕は不満を募らせたけど、それも長くはなかった。とうとう夫婦の間でも衝突が起きるようになった。
ふたりは些細なことで言いあいを始める。トゲのある言葉の応酬は険悪になり、大声を出すこともめずらしくなかった。さすがに大人だから僕たちのように手が出ることはなかったけれど、テーブルを叩いたり食器を手荒に扱う音がたびたび聞こえた。
以前の父さんたちならとても考えられなかった。穏やかな性格同士で、お互いを認めあい尊重しあってきた。今までケンカというか対立している場面なんて数えるほどしか見たことがなかったのに。この船団の航行を円滑に継続していくため、ふたりは細心の注意を払ってきた。
「あなた、そんなものを飲んでっ」
いつものように寝つきが悪く、トイレから通路を戻っているときだった。
母さんのヒステリックな声がリビングから聞こえてきた。またケンカか。僕はうんざりして部屋に入ろうとする。
「うるさいなあー。どうしようと私の勝手だろおー」
ドアにかけた手が、耳慣れない間延びした声で止まった。




