13-4 クコの暴力
グミが泣きじゃくって母さんにすがる。母さんはその頭を胸に抱き、なでつけながら、大丈夫、と尋ねた。泣きわめくばかりで明瞭な返事はない。再び厳しい視線が僕に向けられる。
「こんな暴力を振るうなんて」「叩いてないっ。グミのほうが僕を殴ったんだ」「じゃあ、どうしてこんなに泣いてるのっ?」「知るもんか。僕に注意されたからだろ」「注意というのがぶつことなの?」「だから叩いてないって言ってるじゃないかっ。殴ってきたのはグミのほうなんだっ」「なんの騒ぎだ?」
母さんとは反対の通路から父さんがやってきた。
「あなた、クコがグミに手をあげたのよ」「なに?」「だから違うって言ってるだろっ」「その口のききかたはなんだっ。グミになにをした?」父さんまで強い口調で詰め寄ってくる。「押さえつけて殴っていたわ」「おまえという奴は」
母さんの無責任な証言で父さんの顔色はますます険しくなった。グミは一向に泣きやまない。母さんが冷たいまなざしで僕を見ている。怒りと失望でめまいがしてきた。
「叩いてないって言ってるのにどうして信じてくれないんだよっ。叩く振りをしただけだ」
嘘だった。母さんが止めなかったら殴っていた。でもこう言わなければ立場はもっと悪くなる。僕は声高に主張を続けた。




