12-4 忍び寄る不穏はまず子供たちに
僕はソファーで背中を丸め息を吐いた。
どうも普通じゃない。グミに、ミリーに、マリーもそうだけど、僕自身も。母さんにあんな口のききかたをするなんて。考えごとの邪魔をされた気がしてついいらっとした。
なぜむやみに腹がたったのかわからない。どうしたっていうんだろう。マリーのあの異様な物腰に当てられたような気がする。
彼女らしくない妙なケンカ腰とひねた暗い声。あれが強い毒気となって、僕にも、らしくない言葉づかいをさせた。
本当にそうだろうか。さっきの電話だけでそこまで毒されるものか? あれはきっかけにすぎないんじゃないか?
僕は中空を見つめた。
僕に限らずマリーたちも見せている、この不安定な状態の原因。明白な答えは、最初から目の前にぶら下がっていた。
コクーンの制限。
「外」の世界から隔絶されてもう一カ月はたつ。
一日の多くの時間を過ごしていた場所を取りあげられ、狭くて、極めて顔ぶれの限られた、変化と話題に乏しい自宅にずっと閉じ込められている。来る日も来る日も本当に代わり映えのない生活。新鮮さを好む子供には酷な環境だ。
最近、マリーとの会話も弾んでいない。目新しいことがなにもないのだから話題にもこと欠く。挙句の果てに彼女はさっきのような不適切な話、妹の秘密を暴露する始末だ。退屈とストレスで見境がつかなくなってるんだ。僕もいつまでも冷静ではいられなくなるかもしれない。
実際、それは間もなく訪れた。




