11-9 コクーン禁止令
昼食を済ませて僕はマリーの家に電話してみた。めずらしく一度で彼女が出た。
「なんとなくクコがかけてくるような気がして」
「やっぱり君は超能力者だ」なんのこと、と言う彼女の、首をかしげる様子が目に浮かんだ。「こっちの話。学校がないって変な気分だよね」
「うん。調子狂うしなんだか寂しい。クコも自習してる?」
「もちろん。グミが怠けるばかりして手を焼いてる」
「うちもミリーが、友達と遊びたい遊びたいって騒々しいよ」
お互い下の子に苦労するね、と僕は笑ったけど、彼女はしんみりした様子になった。
「私だって学校のみんなに会いたいよ。なによりクコの顔が見たい」
湿っぽい雰囲気になってしまった。気持ちは僕も同じだ。
彼女を元気づけようと、船の勉強をするために自習速度をあげている話をした。
「すごい。クコ、頑張ってるんだ」
「父さんたちに追いついてトラブルの原因を解き明かしてみせるよ」
「じゃあ私もクコに負けないように勉強しないと」
「うわ、しまった。よけいなことしゃべっちゃったかな。君に楽勝できるところだったのに」
「もう遅いよーだ」今度はふたりして笑いあえた。マリーが活気づいてよかった。
彼女としゃべっていると、俺にも代わってよ、とグミがものほしそうな顔で袖を引いた。
グミがミリーと話したがっている旨を彼女に告げ、弟へ受話器を渡した。彼は喜々として幼なじみと話しはじめた。
勉強がかったるい、漫画を読んでるとすぐ注意される、今日の体育はミニバスだったのに、とミリーに愚痴をこぼす。友達との会話に飢えているのは彼らも同じだった。
彼女ともう少し話したい気持ちを抑えて、弟たちの好きなように話させてやった。
「ほらほら、お昼休みはもう終わりよ」
グミが電話を占領していると、母さんが現れ時間ぎれを告げた。弟は不服そうに電話を切る。最後に少し彼女と話そうと思ってたのに。僕とグミはもの足りない顔でテーブルに着いた。
隣の船では彼女も勉強に燃えているはずだ。負けていられない。僕には単なる競争以上の目標があるんだ。タブレットを操る指先に自然と力がこもった。




