11-8 コクーン禁止令
「こら、グミ。またさぼってる」
僕は顔を上げ、向かいのグミを注意した。彼のタブレットにはドリルの代わりに漫画が表示されている。これで何度目かわからない。少し目を離すとすぐ遊びはじめる。
「ちぇー、兄ちゃんは俺の先生かよ」
「今はそんなところだ」
「まじめな生徒会長さんは口うるさいんだから」
ふくれっつらのグミを相手にせず、僕は自分の端末に目を戻した。
まったく、手のかかる奴だ。母さんから、グミをよく見ておくように頼まれたけどこれほどとは。そういえば、学校の先生から授業態度がよくないと指摘される、と母さんがこぼしていたっけ。
勉強ができないのかと思って見てやると、意外とグミはすらすらと解いていた。僕に似て頭は悪くないらしい。
「おまえ、やればできるんじゃないか。なんでちゃんとやらないんだ」
「だって勉強すんの面倒だもん。わかりきってることばっかやらされるし」
「おまえならまじめにやればクラスで一番になれるよ」
「一番だよ。ミリーがいなければ」
面白くもなさそうに頬杖をついて、グミはタブレットに指を滑らせる。僕はいろいろとあきれた。こいつ、遊びほうけているようで成績はよかったのか。そういえばグミに勉強や宿題の相談をされたことなんてないな。
そしてそのグミにトップの座を譲らないミリー。あの子もおてんばに見えて勉強も優秀だったとは。ふたりの日頃のやんちゃぶりからは想像がつかない。
午前中、僕や、家事の合間に通りかかった母さんに尻を叩かれながら、グミはなんとか自習をこなした。
僕は手際よく午前のカリキュラムを終えて、あまった時間で船の勉強を試みた。
コクーンの制限で状況はより厳しくなった。一日でも早く専門知識を身につけたい。父さんや叔父さんに追いつこうと懸命にテキストを読み込んだ。
だけど、当然ながらやはり相当に難しい。電気、機械、通信、情報。どの分野も難解な専門用語が並び、数学や物理の見慣れない数式とともに理解を阻んだ。
僕のレベルでもわかる項目がないか探してみたものの徒労だった。どれも今の学習段階で手に負える代物ではなかった。
結局、一足飛びに学びうるものではなく、中学、高校レベルと順を追って基礎を固めていくしかなさそうだった。
まずは、自習のカリキュラムをできるだけ早くこなすことに決めた。幸い、学校の授業と違って自分のペースで進められる。
午後も飛ばして勉強しようと考えながら、おいしそうな匂いの漂ってくるダイニングに向かった。




