11-7 コクーン禁止令
夢のなかで母さんの呼ぶ声が聞こえた。
遠く、近く、何度となく繰り返し僕を呼んでいる。体にのしかかる眠気に抗って、意識を夢の世界から現実へと引きあげる。朝日になり代わって光を投げかける照明に僕は目を細めた。
何度目かわからない母さんの声に僕は眠たげに応じた。
今朝は比較的早く起きられたようだ。ダイニングには父さんもグミもそろっていた。母さんがあきれ顔で僕のパンをテーブルに置く。
「あなたは飽きずに毎朝一番最後ね。学校がないからって寝坊してもいいわけじゃないのよ」
僕は、うん、とへたり込むように席に着いた。
そうだ。今日から学校には通わなくなるんだ。
土曜日や日曜日、祝日、長期休暇を除けば、登校しない日なんて今までなかったことだ。普段ならこのあとコクーンに向かうはずなのに。
当たり前の日課を失った朝。どうしても現実感がない。
僕は眠気のせいだけではないぼんやりとした目で、漫然と朝食をとった。
食後、僕たちはタブレットで自習をするよう母さんから言いつけられた。
「えー、勉強するのー?」
学校がないということで遊ぶつもりでいたグミは口をとがらせた。まあ、勉強は当然だろう。無期限とはいえ、いずれ学校に復帰することになる身だ。いつでも戻れるようにしておかないと。
僕とグミは、リビングでローテーブルを挟んで座った。




