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11-5 コクーン禁止令

 しばしの時が流れ、やがて泣き声は収まった。


「ごめんね、泣いちゃって」鼻をすすりながら彼女は口を開いた。「クコが電話してきてくれてよかった。私ね、さっきも部屋で泣いてたの。ミリーのこと言えないぐらい。クコに電話するなんて思いつきもしなかった」

「僕はただ、君の声がたまらなく聞きたくなって」

「ほんと? クコからそんな言葉を聞けるなんてうれしい」思いがけず彼女の口調が弾む。


「えっ、いや、今のはそう深い意味じゃなくて……」明るい声をあげる彼女に、僕は頬がかっと熱くなった。口を滑らせてしまった。


「クコの声が聞けてよかった。ちょっとだけ元気になれた」

「そりゃよかった。僕も君の声が聞けて……いや、だからこれはそんなに深い意味は……」

「はいはい、わかってるよ。ふふふ」


 電話の向こうでにやけるマリーが目に浮かんで僕は恥じ入った。顔が見えないことを今だけはありがたく思った。こんな赤らんだところを見られたらもっとからかわれる。

 ともかく彼女が元気になってくれてよかった。僕もいくらか気分が晴れた。


 それから僕たちはしばらく話した。

 家のこと、友達のこと、先生のこと、部活のこと、駅前の店のこと。

 しばらく会えないとわかってから急に、話しても話しても足りなくなった。普段は長電話をしていると注意してくる母さんも、今日は黙認してくれた。


「ごめん、ミリーが部屋から出てきて。グミに代われって」


 電話の向こうでミリーのわめく声が聞こえた。僕は部屋の隅ですねている弟を呼んだ。

 ぶっちょうづらでやってきたグミは受話器をひったくった。無愛想な顔をしていたわりにはミリーと長々話し込んだ。あいつらも僕たち同様、お互いの声が聞きたくてしかたがなかったんだ。グミの後ろ姿が微笑ましくみえた。

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