11-4 コクーン禁止令
「クコ……」
弱々しい声だった。涙声のように悲しそうな響きで彼女は出た。
「そっちでもコクーンの話があったんだ」
「うん……。お父さんたちが、コクーンは危険だから使っちゃだめだって。クコに会えないなんて嫌だって言っても聞いてもらえなくて」
僕のように諾々とは受け入れなかったんだ。
いや、僕だって受け入れたわけじゃない。抗っても無駄と、変にものわかりがよかっただけだ。彼女は違った。精いっぱいの拒否を示した。
「どうして。どうしてこんなことになっちゃうの。いきなりこんな話ってないよ」
「僕もさ。信じられない」
「現実の行き来ができなくなって、次はコクーンもだめだなんて、どういうこと?」
まるで僕がコクーンの使用制限を決めたかのような口ぶりで彼女は訴えた。
「まったく理不尽だと思う」僕相手で気が済むならと僕は静かに相槌を打った。
「ミリーはめそめそ泣いて部屋に閉じこもってる」
「うちもグミが大変だよ」
「クコは平気なの?」彼女の問いに僕は、まさか、と答えた。「冷静なように聞こえる」
「実感がないだけだよ。いつものように別れたのに、当分、君の顔を見られないかもなんて」
「ほんと。信じられない。次に会えるのっていつになるんだろ。何カ月も先だなんてやだよ」
何カ月では済まないかもしれない。その想像は恐ろしくて口には出せなかった。
「クコに会いたい。今すぐ会って顔を見たい。直接、声を聞いて安心したい」切なげな声が受話器から漏れる。「こんな気持ちのまま別れ別れにさせられるなんてひどいよ」
うっ……うう……、という彼女の嗚咽が聞こえた。
感受性の高い子なので、読書や映画で泣くことはある。一方で元来は気丈なため、つらいことではめったに泣かない。とても強がりで、弱いところは見せたがらない。その彼女がこらえきれず涙している。
彼女は対峙したんだと思った。
僕と会えなくなることの意味を真正面から受け止めて苦しんでいるんだ。僕のように頭のなかの恐怖から逃げたりせず。僕よりよっぽど勇敢だ。
彼女のむせび泣く声を、僕は胸が詰まる思いでじっと聞いた。




