表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/203

2-1 目玉焼きアスパラ添え

 長い時間がたった。

 暗くて冷たい虚無の時間。

 果てのない、永遠とも思える長い時間。


 *


 汗をぐっしょりとかいていた。全身がしたたかに濡れている。

 僕はベッドの上で身じろぎした。よかった、手も足も動く。

 仰向けのまま天井を見すえた。非常事態を示すオレンジ色などではなく、さわやかな朝日をイメージした白い照明が灯っていた。

 身を起こして、ほう、と深く息をついた。

 念のため室内を見回してみる。ベッドと机とタンスがあるぐらいの、窓もない殺風景な部屋。いつもと変わりはない。


 起きなさい、クコ、とダイニングのほうから母さんの呼ぶ声が聞こえた。どうやら家族も死んだりしていないようだ。

 僕は大きく伸びをしてベッドから降りた。汗を吸ったパジャマを脱ぎシャツとズボンに着替える。袖を通しながら、いっそこの宇宙船での暮らしも夢だったらよかったのにと思った。それがかなわないにしても、現在の状況はどうにかなってほしかった。今の船内はあまりに息が詰まる。このところ連日のように悪夢にうなされている。


 クコ、まだ寝てるの。

 また母さんのいらだった声が飛んでくる。怒らせると面倒だ。それは母さんだけでなく父さんも含めて。

 シャツのボタンをはめながら、今日もまた、なんの面白味もない一日が始まるのかと嘆息する。面白味がないだけならまだいい。もっと荒んだ風が家のなかに吹いている。

 その風が吹き込むように母さんのとがった声がまた響いた。さっさと行かないと。朝っぱらから陰鬱な気分で僕は部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ