2-1 目玉焼きアスパラ添え
長い時間がたった。
暗くて冷たい虚無の時間。
果てのない、永遠とも思える長い時間。
*
汗をぐっしょりとかいていた。全身がしたたかに濡れている。
僕はベッドの上で身じろぎした。よかった、手も足も動く。
仰向けのまま天井を見すえた。非常事態を示すオレンジ色などではなく、さわやかな朝日をイメージした白い照明が灯っていた。
身を起こして、ほう、と深く息をついた。
念のため室内を見回してみる。ベッドと机とタンスがあるぐらいの、窓もない殺風景な部屋。いつもと変わりはない。
起きなさい、クコ、とダイニングのほうから母さんの呼ぶ声が聞こえた。どうやら家族も死んだりしていないようだ。
僕は大きく伸びをしてベッドから降りた。汗を吸ったパジャマを脱ぎシャツとズボンに着替える。袖を通しながら、いっそこの宇宙船での暮らしも夢だったらよかったのにと思った。それがかなわないにしても、現在の状況はどうにかなってほしかった。今の船内はあまりに息が詰まる。このところ連日のように悪夢にうなされている。
クコ、まだ寝てるの。
また母さんのいらだった声が飛んでくる。怒らせると面倒だ。それは母さんだけでなく父さんも含めて。
シャツのボタンをはめながら、今日もまた、なんの面白味もない一日が始まるのかと嘆息する。面白味がないだけならまだいい。もっと荒んだ風が家のなかに吹いている。
その風が吹き込むように母さんのとがった声がまた響いた。さっさと行かないと。朝っぱらから陰鬱な気分で僕は部屋を出た。