11-1 コクーン禁止令
翌日以降、マリーはなにごともなかったかのように、努めて元気な素振りを見せた。
僕とも友達ともよくしゃべり、足の捻挫が治ってからは体育で駆け回り、僕が部活でボールを追いかける姿を、美術部の彼女はスケッチした。休みの日には友達も誘ってゲームセンターやカラオケで遊んだ。
唯一、生徒会活動でプライがからんできたときだけ、わずかに表情を固くしていたけど、僕が事務的にあしらうと上機嫌になった。そんな彼女を不覚にもかわいいと思ってしまった。もちろん、恥ずかしくて口に出したりはしないけれど。
コクーンの夢での生活は、以前となにも変わらない、平穏で楽しくてちょっと退屈な日常のままだった。
一方、現実の船では、大人たちが毎日険しい顔つきで話しあいをしていた。
僕やグミが首を突っ込むと、子供は向こうに行ってなさいと追い払われる。マリーの家でも同様らしい。
問題のハッチは今のところ正常に開閉した。
父さんと叔父さんがテストする場に居あわせて、向こう側に立つマリーの姿を見ることができた。
もしかするともう二度と直接見られないかもしれないとの恐れがあっただけに、僕たちははしゃぎあった。
ただし、船の行き来はさせてもらえなかった。ハッチの動作に保証がないからだ。勝手に開けたりしないようにとも釘を刺された。
一度、グミとミリーがいたずらをして開けたとき、父さんたちがこっぴどく叱った。グミは泣いていたけど、僕は、先日叱られてるときに笑われた仕返しとして、助け舟は出してやらなかった。僕だってマリーの顔をダクト越しに見たいんだ。
船のなかでは不穏な空気が漂っていたけれど、学校に行けば、街に出かければ、それを忘れることができた。変わらない生活がそこでは待っていて、現状のわずらいごとから逃れる術となってくれた。この仮想世界だけはなにも変わらず享受できる。
しかし、その認識は覆ることになる。




