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10-7 クコの浮気

 思ったとおり超能力者だった。

 そうだ、僕の心のなかなんて彼女にはお見通しだったんだ。釈明をしなければ。


「ち、違うんだ、プライの一方的なアプローチだったんだ。僕のことをああだのこうだのしつこく言ってたけど僕ははっきり断った。ほら、いつも言ってるだろ、好きだとかは僕はわからないって。だから彼女のことなんてなんとも思っていないし、全然、本当に、なんにも」


 まくしたてる僕をふっと見て、彼女はわずかに目を細めた。春風がさああっと僕たちの間を吹き抜けていく。

 彼女はまた子供たちのほうに視線を戻して、ぽつりとこぼした。


「男の子って浮気性なんだなあ」


 ざくり、と胸をえぐられたような気がした。

 鋭いナイフでえぐられ、そのまま地面に張りつけられたかのような。いっさいの弁解の余地を認めない響きがあった。

 僕はなにも言えず、彼女の横顔を見つめることしかできなかった。凍てつくような時が流れる。


「お昼にクコとラブラブになれて私、浮かれてたんだ。クコにだいじにされてるんだなって。すっごく幸せだった」僕と目を合わせず抑揚のない声で彼女は語る。「その矢先にこれだもん。ハッチは異常だし、これじゃまるでクコのことをあきらめろって言われてる気分よ」


 淡々と話しているのが逆につらかった。いっそ手厳しく詰め寄られたほうがまだよかった。仲を確かめあったそばから僕は。

 たとえ頭のなかで思っただけのことでも、彼女のまっすぐな気持ちの前では十分な裏切りだ。プライに心揺らいだ自分が情けなかった。僕だけを思ってくれるマリーがいながら。


 ――いや、もう彼女の気持ちは僕から離れているのかもしれない。さっきからの態度が物語っている。マリーに嫌われる――


 えぐられた胸に今度はずしりと重石がのしかかる。ひどく、冷たくて重たい塊が。胸が押しつぶされそうで、文字どおり、本当に息苦しい。


「マリー」


 重石の重圧から逃れるように僕は彼女の名を呼んだ。

 彼女は再び振り向くと、僕に告げた。

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