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9-8 もの憂げな翌朝

 そわそわと落ち着かない素振りで彼女は僕を待っていた。校門でひとり。ほかに生徒の姿はなかった。声をかける。僕に気づいて、うれしそうな不安げな、複雑な笑顔でマリーは手を振った。


「家に戻れたんだね」

「急にハッチが開いて。原因はわからないみたいだけど」

「ひとまずはよかったね。伯母さんたちのところに帰れて」少し寂しげに彼女は微笑む。


「うん」僕は歯ぎれ悪くうなずいた。「母さんがすごく心配してた」


 本当によかったんだろうか。家族の元に戻れたのは喜ぶべきことなのかもしれない。叔父さんたちが言っていたように、うちの船が僕のいるべき場所なのだから。それでも、素直によかったとは言えない。戻れた代償に大切な友達と会えなくなってしまった。こうして目の前に立っていると実感が湧かないけれど。


「僕たちもう会えないのか」

「会えてるじゃない」

「コクーンの夢のなかだ」

「実際に一緒にいるのとほとんど代わりないよ」


 うそぶくように、わざとらしく明るい声で彼女は言った。それが空元気だとわかっていても、僕は穏やかな気分ではいられなかった。


「似て非なるものだよ」僕の語調は強まる。「このままじゃ僕たち、現実では会えないんだよ? 君はそれでいいの?」

「いいわけないよ!」


 彼女は、少し声高になった僕よりずっと言葉を荒らげた。さっきまでのはかなげな笑みは消え、思いつめた表情で僕を見ている。


「お昼ご飯食べにうちに帰ったらクコがいないんだもん。お父さんは、ハッチの原因がわからないから向こうに行くなって言うし」うつむき加減に彼女はまくしたてる。「私たち、離れ離れじゃないっ。結婚なんて夢のまた夢だよ!」

「ごめん、マリー」僕は低い声で謝った。


 彼女は悲しそうな目をしていた。気持ちを抑えてたんだ。それに気づかずに僕は。いつだって鈍感なんだ。

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