表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/203

9-5 もの憂げな翌朝

「叔父さん、叔母さん、それじゃあ」


 別れを告げる僕に「ああ」「ええ」とふたりは首を振った。僕はダクトのなかに身を投じた。重さから解放された体が宙に浮かぶ。居住区画とは異質の、重力が存在しない空間。普段ならつかの間の無重力を楽しんでいただろう。今は違う。いつもとまったく状況が異なる。もし今、ハッチが閉じてしまったら。船と船を行き来できないどころの騒ぎではない。早く、早く向こうにたどり着かなければ。僕は恐ろしい想像を振りきるように急いでダクトをくぐり抜けた。


「クコ!」


 帰り着いた僕を母さんが抱き締めた。父さんも僕の頭を強くなでつけた。両親からこんな扱いを受けるなんて小学生以来だ。照れくさい。まるで何年も会っていなかったかのようだった。心配をかけたことを実感する。しばらく僕はされるがままに立ちつくした。


 やがて抱擁から解放された僕はダクトの向こう側を見た。ハッチはまだ開いていて、叔父さん夫婦がこちらを見守っていた。


 ハッチがまた開かなくなるおそれがあるなら、開放したままにしておけばいいように思えるけど、そうもいかない。なんらかの理由でダクトが破損すれば船内の気密性が急速に失われる。そんな異常事態には、ハッチの自動閉鎖によって対処される仕組みになっているはずだけど、今回の件で信頼性は揺らいだ。不用意に開けっ放しになどできない。父さんたちはダクト越しに話して、早急にハッチを閉じることで一致した。


 少しの間、僕たちは見つめあったのち、父さんがおもむろに開閉ボタンを押した。ハッチは正常に動作し、閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ