9-4 もの憂げな翌朝
「やった、開いたんだ」僕も小躍りして声をあげた。「直せたんだね」
「いや、それが」我に返ったように叔父さんは真顔に戻った。「急に開いたんだ」
突然開かなくなり、突然開いた――。完全無欠に近いこの宇宙船にあるまじき挙動だ。誰もが釈然としない顔だった。
「クコ、早く戻れっ」
ハッチの外側、ダクトの向こうから僕を呼ぶ声がした。父さんだ。向こう側のハッチも開いて手招きをしている。離れていてもはっきりわかるほど険しい表情だった。それがなにを意味しているかを僕は悟った。開いた理由がわからない――つまり、また開かなくなるおそれがある。今戻らなければ永久に家に帰れなくなるかもしれない。僕は迷った。向こうに戻れば二度とこっちに来られないかもしれない。マリーに会えなくなる。
僕が躊躇していると「早く行け」「行きなさい」と叔父さん、叔母さんが命じた。ふたりとも厳しい顔つきだ。僕は「でも……」と力なくかぶりを振った。
「おまえはおまえのうちに帰るんだ」「あなたがいるべき場所よ」
叔父さんが僕の肩に手を置き、その横で叔母さんが深くうなずいた。「うん……」と僕は弱々しく返事をした。マリーの顔が見たい。話したい。でも彼女はコクーンの夢のなかだ。強制的に覚醒させる行為は、脳に深刻なダメージをおよぼす危険があり禁じられている。外部から連絡をとって起こしていては時間がかかる。その間にハッチが閉じてしまえば終わりだ。
「クコ!」と母さんの呼ぶ声がした。母さんも来ていた。「お願い、早く戻って」
不安に染まったまなざしが僕を射抜く。ぐずぐずしていられなかった。




