9-2 もの憂げな翌朝
学校はマリーとミリーが行くことになった。コクーンは二台しかない。僕たち三人のうち誰かが休まなければならなかった。大人たちが昨晩話しあって、ローテーションで順番にひとりずつ休ませることに決めた。最初に休むのは僕にしてもらうよう申し出た。この家の子供でないのは僕だから、まずは彼女たちに普段どおり行ってほしかった。叔父さんたちは了承してくれた。
登校時間がくると僕はコクーンの前までふたりを見送った。
マリーは指で頬をなぞりながら「なんか変な気分だね」と半笑いになった。それはそうだろう。学校に行く姿を見るのも見られるのも初めてのことだ。ちょっと恥ずかしいかも、とはにかんで彼女はコクーンへ仰向けになった。ミリーはもっと露骨で「クコ、見ないでよ。エッチ」と口を曲げ、もう片方の楕円形の機器から僕をにらんだ。
「初日なんだから見送りさせてよ」
初日――。自分で言ってはっとする。これは今後、毎日続くできごとになるんだろうか。子供の誰かがひとり家に残る生活。少なくとも今はまったくの手詰まりだ。今も叔父さんが船を調べているが暗礁に乗り上げたままのようだ。船団の将来は気がかりだけど、もっと目先の学校生活がこの先どうなるのだろうと心配になる。子供にとって学校の占める割合は大きい。
いってらっしゃい、と不安な気持ちを抑えてふたりに手を振った。せめて笑顔で送り出したかった。いってきます、とマリーが微笑み小さく手を振り返した。その左隣でミリーが「いってきまーす」と調子外れな口調で言った。
ふたりが目を閉じる。姉と妹は間もなく身じろぎのいっさいをしなくなった。ただ規則正しく呼吸するのみ。コクーンの夢へのログインは短時間だ。意識はもうそれぞれの学校に飛んでいるだろう。僕だけが自宅でもない家に残って。複雑な気分でしばらくいとこたちの寝顔を見つめたあと、僕はコクーンの部屋をあとにした。




