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8-1 懐かしのお泊まり

「――あれ?」


 僕はハッチの前で首をひねった。


 開閉ボタンを押したのに反応がない。いぶかしがりながら二度、三度と押してみた。が、ハッチはぴくりとも動かない。通路の壁に取りつけられた小さな扉は沈黙したままだ。


「押しかたが悪いんじゃないの?」


 マリーが代わりに押してみたが結果は同じだった。何度押しても開く様子はない。普段はスムーズに開け閉めできるのに。夕方、ここに来たときにはなんともなかったはずだ。こんなことは初めてだった。


 僕たちは叔父さんを呼んだ。叔父さんはこの船の管理をほとんどひとりでおこなっている。半信半疑で通路にやってきたその顔が間もなく険しいものになった。叔母さんやミリーまで集まってきて、家族総出で見守るなか、叔父さんはうちの父さんとヘッドセットで話しながらハッチを調べた。


「電源周りに異常はないようだ。切断なし。四番から十番までのコンデンサーもチェック済みだ。A-Bジョイントの接続良好。今、コンプレッサーの圧力を測定している。ざっと見た感じだとやはり機械トラブルじゃなさそうだ。システム上の問題のように思われる」


 ハッチ周辺のカバーを取り外して、叔父さんは工具や計測機器をとっかえひっかえしている。壁面内の配線と配管はまるで生きものの内臓のようだ。僕もたまに父さんから船のメンテナンスについて教わることがあるけど、まだまだなにもわからないことだらけだ。こんな複雑極まりない機器を取り扱う父さんたちを尊敬する。その父さんたちでさえ船について手出しできる領域はほんの表層だけらしい。いわく、人類の持てる叡智を惜しげもなく投じて建造された宇宙船は、宇宙そら飛ぶブラックボックスだとか。当たり前のように暮らしていると忘れがちだけど、僕たちの日常は恐ろしく高度なテクノロジーの上でなりたっている。その技術はすばらしく優秀で、これまでトラブルらしいトラブルはほとんど発生してこなかった。叔父さんの話では、ハッチのこんな症状は叔父さんの世代でも経験がないという。

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