表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/203

7-6 おしゃまなミリー

 叔母さんの手料理はうちの母さんに負けずおいしい。それぞれの家にオリジナルのレシピが伝わっていて、同じメニューでも味つけが違う。船団では伝統的に男が船のメンテナンスを、女が家事を主に担う。彼女はときどき叔母さんから料理を習っているようだ。将来、彼女がうちに来たら、日によって母さんと叔母さんの味を楽しめるわけか。少し得をする気分だ。


「ねえ、マリーの料理の腕前はどうなの」

「うーん、そうねえ。悪くはないかしら」


 叔母さんに尋ねてみると、娘を見て含み笑いをしてみせた。彼女は口をとがらせる。


「だいぶ上達してるでしょ」

「そうね、前よりはね」

「お姉ちゃんが作ったのよりお母さんのほうがいい」


 叔母さんのフォローを遮ってミリーが声をあげた。姉ににらまれても妹は知らん顔だ。


「いつか家庭科の授業で腕を奮ってみせるからね」


 彼女は僕にウインクした。僕はしょっちゅうこっちに来てるんだから、料理を振る舞うぐらいいつでもできそうなものなのに。まだ全然自信がないらしい。


「楽しみにしてるよ」


 フィッシュフライを口に入れながら、彼女の料理をいただくときにこの味はしっかり忘れるようにしようと思った。



 食後のミルクティーをいただきながら、洗いもの中の叔母さん以外と話しているときだった。


「クコってオジサンっぽいよね。あ、クコのお父さんじゃなくて、中年のほうのオジサン」ミリーのなにげない指摘に僕はショックを受けた。「言葉づかいとか子供らしくないし。君って呼びかたする子、周りに全然いないよ」


 僕っておじさんっぽく見られてたの? まだ十五なんだけど。叔父さんは陽気に笑っている。


「ク、クコは大人っぽいのよ。そういうの、老成しているっていうのよ」


 あわててフォローするマリーに、ローセーってなに、とミリーが聞いていた。


 いや、まあ、僕もちょっと自覚はあったけど、面と向かって言われるとぐさっとくるというか。じゃあいっそ「マジヤバい」とか言えばいいんだろうか。……うん、僕のキャラじゃないや。


 その後、マリーは「お姉ちゃんはオジサンクコが好きなの?」と聞くミリーをたしなめ、「そっかー、僕の話しかた、おじさんっぽいかー、ははは」と傷心の僕を「クコはおじさんぽくないよ。大人びててかっこいいよ」と慰めた。でも子供は正直っていうし。うう。

 場の空気を入れ換えようとマリーは、ゲームをしよう、とリビングに移動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ