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7-5 おしゃまなミリー

 ダイニングに行くと叔母さんが食事の用意をしながら「こっちで食べていくって家に連絡しておいたから」と言った。

 僕は席に着いて、遊びから帰ってきていたミリーの話相手をした。マリーが叔父さんと同じ黒髪なのに対して、妹のミリーは叔母さん似の小豆色で、ショートボブだ。

 彼女は、小学校であれを習ったこれを習った、音楽の授業でリコーダーを褒められた、体育ではドッジボールで八人倒した、そんなことをよくしゃべった。姉妹そろっておしゃべりだ。

 運動神経が婚約相手のグミよりもいいところも、マリーに似ている。グミも悪いほうではなくむしろ体を動かすのは非常に得意だけど、ミリーにはなかなか勝てないみたいだ。グミはよく不平をこぼしている。僕たち兄弟がいとこの姉妹を追い越せる日はいつになるんだろう。


 叔父さんが船のチェックから戻ってきたとき、マリーもシャワーを終えてダイニングに現れた。髪が少ししっとりとしている。文字どおりカラスの濡れ羽色の、風呂あがりの姿。なんだかマリーのようでマリーじゃないような、不思議な空気を漂わせていた。なぜだろう。なんとも居心地が悪い。


「あ、今日、フィッシュフライじゃない。私これ大好き」


 うれしそうに彼女は隣に座る。ふわりと女もののシャンプーの匂いが鼻をくすぐる。わけもなくきまりの悪い気分にさせられる。僕は少しだけ彼女から顔をそらした。


 彼女の家でとる夕食は悪くない。うちで食べるときとはまた違う雰囲気が味わえて面白い。叔父さんは豪快で、叔母さんはよく笑う。ミリーはいたずらっ子でおしゃまだ。


「叔父さん、よく食べるよね」

「俺の家系は大食らいだからな。こいつにも遺伝してる」


 そう言って叔父さんが目を向けた彼女の皿も大盛りだった。確かに彼女はよく食べる。僕がかなわないわけだ。


「お姉ちゃん、そんなに食べると太るよー」

「私は太らない体質なの。運動もちゃんとやってるし」


 見せつけるように彼女は料理を頬張り、もぐもぐと口を動かした。結婚してうちに来てもこんなふうにしっかり食べるんだろうか。それが妙に頼もしく思えた。

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