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7-1 おしゃまなミリー

 翌日、僕は順調な日常に戻ることができた。あいかわらずぎりぎりで遅刻して、ソフィア先生に叱られて、マリーの軽口を聞いて、授業中にふたりでこそこそ話して、またソフィア先生に注意されて、休み時間にビシーから、夫婦ゲンカは終わったのか、なんて冷やかしを受けて。平凡で少し退屈だけどかけがえのない時間を、彼女とケンカしたあとはいつも感じているんだった。一日でも仲たがいをする日があると気分が晴れない。彼女はやっぱり一番の親友なんだと気づかされる。


「今日学校が終わったらうちに来ない? ゲームしよ」


 体育の授業で彼女が誘ってきた。短距離走でもマラソンでも僕に勝っていた彼女は、ゲームでも圧倒して優越感に浸りたいらしい。そうはさせるものかと受けてたった。彼女との遊ぶ約束は僕を浮足だたせる。そのあとのランニングはいいペースで走りきれた。


「あれ? なにかあったのかな」


 何人かの男子同士でしゃべっているときだった。ひとりがグラウンドの向こう側を指差した。コース上に人だかりができている。行ってみると、集まったクラスメイトの中心でマリーが座り込んでいた。その横についていたソフィア先生が保健委員を呼んだ。


「どうしたの?」

「足をくじいちゃって」


 僕が尋ねると、彼女はつらそうに右の足首を押さえた。保健委員のフリングスという男子が来て彼女を立たせた。クラス一の長身でちょっとバランスが悪そうだったけど、彼はマリーを支えて保健室へ向かった。


「はい、授業を続けるわよ」


 ソフィア先生の指示で生徒はそれぞれの持ち場に戻った。彼女が心配だったけどついていくわけにもいかない。保健委員に立候補しておけばよかったな。さっきまでとは打って変わって、僕の走りは気の抜けたものになっていた。


 体育の授業後、保健室へ様子を見に行こうと考えていると、彼女が教室に戻ってきた。


「軽い捻挫だって。二、三日で治るって保健の先生が言ってた」


 そう言って彼女は笑ってみせた。痛々しく足首に包帯を巻いていたけど、なんとか自分で歩けるようだ。大事にいたらなくてよかった。つらそうな彼女を見るのは僕もつらい。

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