6-1 やきもちマリー
翌日、学校で会ったマリーはどことなくよそよそしかった。いつもなら積極的に話しかけてくるのに、教室にいてもほかの女子とばかりおしゃべりをしている。昨日の夜も当然うちには来なかったし、電話もしてこなかった。
「夫婦ゲンカですかい、だんながた」
休み時間にひとり、席でぼんやりしていると、クラスメイトのビシーがからんできた。小学校からの腐れ縁の男子だ。いたずら好きでしょっちゅうなにかしらやらかしているけど、意外と女子に人気がある。
「ある情報筋によるとおまえら昨日デートしたそうだな」
肩にぽんと手を乗せて彼は顔を寄せてきた。さてはプライだな。さっそく噂を流してくれて。彼はにたにた笑いながら続ける。
「仲よくデートをしたおふたりさんが、どうして今日は別々にいるのかなー?」
「別に僕らはふたりで一セットってわけじゃない」
「デート中にマリーを怒らせるようなことを言ったんじゃないのか」
昨日のやりとりが脳裏に浮かぶ。彼女の落胆したような顔。
「怒らせてなんかない。ちょっとだけ行き違いみたいなことがあっただけというか」
「行き違いねえ」目を細めて彼は含みのある顔をしてみせる。
「なにがあったか知らないが、ケンカしたなら先に謝っちまえ。女子にはそれが一番有効だ」
「だからケンカじゃないってば」
「お互い気まずいんだろ、今。だったら修復しようぜ。ふたりだけじゃ話しづらいってんなら何人かで遊びに行くか。ぱーっと遊んで盛りあがればわだかまりもなくなるって」
善は急げだと言って、彼はよく遊ぶ友達に声かけて回りだした。僕はあきれて息をついた。先走っている感はあるけど、僕のことを考えて力になろうとしてくれる。悪友だけどいい奴だ。




