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30-5 宇宙生活の終焉

 消灯した。

 常夜灯のもとでベッドに横になる。寝るのがこんなに緊張するのは初めてだ。


 隣には浅く速く呼吸するマリーがいた。

 彼女と添い寝をするなんて十年ぶりだろうか。子供の頃以来だ。大人になってから誰かと寝るのは初めてだった。気持ちが高ぶる。

 幸か不幸か、彼女は酔いつぶれて眠っていた。ある意味、ほっとする。


 僕は二日間にわたって、夜の営みについて母さんからレクチャーを受けた。

 ムードの高めかたとか、ブラジャーの外しかたとか、避妊具のつけかたとか、初めては痛がるかもしれないから優しくしてあげることとか。セックスなんて言葉を母さんの口から聞きたくなかった。

 しまいには自慰の経験がないことまで知られてしまうし。もう恥ずかしくて死にそうだった。

 初夜に臨むのが嫌で嫌でたまらなかったけど、彼女の失態のおかげでひとまず今夜は免れそうだ。


 その彼女が横転した。目が開く。


「クコ、ごめんね。私、酔っ払ってしまって。頭ががんがんしてエッチできそうにない」


 申しわけなさそうに詫びる彼女に僕は「いいよ。君と一緒に寝られるだけで十分だよ」と慰めた。でも、と彼女は言葉を返す。僕は別の話題を振った。「母星は、どんな世界で、どんな社会が築かれているんだろうな」


 僕たちの船はあと半年で母星に到達する。

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