5-4 詮索好きのプライ
突然の問いかけに僕はびくっと硬直した。今、彼女はなんてった? キ、キスって?
「私としてみたい? キス」
僕が答えないでいると、彼女は背を向けたままもう一度尋ねてきた。聞き間違いとかじゃなかった。な、なんでそんなこと言いだすんだ。自分の顔が赤くなるのがわかった。心臓も、まるでなかに小人でも住んでいてなにか苦情を訴えているかのようにどんどんと打ち鳴らされる。思考は半分フリーズ状態だ。プライの一難が去ってまた一難。どうして彼女はそんなことを平然と聞けるんだ。
「黙ってないで答えてよ」
いや。彼女は平然となんてしていなかった。振り向いた彼女の顔はのぼせたように真っ赤だった。恥ずかしそうに口をゆがめている。胸の前で握り拳をふたつ固める仕草は、自身を奮いたたせているかのようだった。なんだよ、自分だって聞きにくいんじゃないか。
「ぼ、僕たち中学生だよ。そういうことは、け、結婚してからするものだろ」
「前見た映画ではしてたよ。こ、高校生だったけど。お母さんとお父さんが初めてキスしたのも高校のときだったって聞いたことあるし」
「えっ、そうなの?」
うちは親のそんな話、聞いたこともない。彼女の家は女三人だから恋愛系の話を結構したりするんだろうか。
「ど、どうなのよ。キスしたいと思うの? 思わないの?」
「キスキス連呼するなよ。恥ずかしいだろっ」
「私だって恥ずかしいよ。でも、クコはどう思ってるのかなってすごく気になって……」
赤く染まった顔をうつむき加減に、彼女はもじもじとしている。僕だって耳たぶまで熱くなっている。こんな人通りの多いところでなんて話をしてるんだ、僕たちは。プライのせいだ。あの子がおかしなことを聞くからマリーがこんなことを言いだすんだ。今度の生徒会活動のときに多く仕事を割り振ってやる。
「私は、したいよ。クコのこと、わりと好きだなって思ってるから」
「僕は……」
「クコは?」
言いよどむ僕に彼女は顔を上げた。心なしか潤んだ目で、まじまじと僕を見ている。すごく居心地が悪い。そらしちゃだめだと思いながらも視線がさまよってしまう。僕は声を絞り出すように言った。




