5-2 詮索好きのプライ
僕とマリーは仲よく同時に赤面した。
「ば、ばば馬鹿なことを聞くなよっ」
「そ、そうよっ。デリカシーがないの?」
動揺する僕たちにプライはいやらしく目を細めて追撃の手を加える。
「先輩たちは親同士が結婚を認めた仲ですからねえ。頻繁にデートも重ねてるし、もうやることはしっかりやっちゃってますよねえ」
だから頻繁にはしてないってば。な、なんだ、やることって。僕らはまだ中三だぞっ。
「ねえ、ここだけの話で教えてくださいよー。どこまでやったのか。誰にも言いませんから」
信じられるものか。プライのあだ名は放送委員だ。面白おかしく尾ひれをつけて触れ回るに決まってる。だいたい、プライの期待するようなやましいことは僕たちの間にいっさいない。
対処に困って僕とマリーがおたおたしていると、運よく助け舟が来た。道路の向こう側で「おーい」とこちらのほうへ呼びかける声があった。制服姿の女の子がふたり、手招きをしている。プライの友達のようだ。残念、と笑ってプライはそちらへ駆けていった。談笑しながらビルの陰に消える三人を見届けて、僕たちは、ふう、と息をついた。
「なんか冷や汗かいちゃったね」
マリーが苦笑する。念のためプライたちとは違う方向に僕たちは歩きだした。あの子は普段から人のことを嗅ぎ回っているけど、僕と彼女が一緒にいるとなにかスイッチが入るのか、ことさらに突っ込んだ話をしてくる。学校の生徒会活動では、周りの目を気にして比較的おとなしいけど、準備室などでふたりきり、三人だけになると本性を表すことがある。そのたびに僕たちはひやひやさせられる。油断のできない子だった。




