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26-2 青い巨塔に待つ者

 二十人ほどの客とともにエレベーターに乗った。そこも左右がガラスになっていて、降下する景色を楽しめた。

 気圧差で耳に違和感が生じるころ、中央展望台に到着。最上階の展望台へはエレベーターを乗り換える必要がある。


 エレベーターを待つ間、僕は中央の吹き抜けを柵越しに見下ろしてみた。

 目のくらむような高さだ。地上階にいる人たちが豆粒みたいに小さい。吸い込まれそうな気分になる。

 もちろん、転落防止用に吹き抜けがわに傾斜したアクリル樹脂の壁が設置され、安全対策は施されてはいるが、ちょっとしたスリルを味わえる。


「見てみなよ。すごいよ」と感嘆あげると、マリーは離れた場所で「私、そういうの無理」と手を突き出し首を振った。そうだ、彼女は高いところが苦手だったっけ。ならついて来なければいいのに。


「遊びに来たんじゃないでしょ」と怒られて、上階へのエレベーターに乗ろうとしたときだった。

 聞き覚えのある声が僕たちを呼び止めた。


「先輩、指輪をそこから投げ捨ててください」


 プライだ。

 ガラスの壁面の前、外界のビル群を背に、決然とした目つきで僕たちを見すえている。


 なぜここに、とはもう思わなかった。どう仕掛けてくるかを警戒した。

 彼女はしごく真剣な顔つきで声を張った。


「言うとおりにしてくれないと、あたし、ここで――脱ぎますよっ」


 ………………はい??

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