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5-1 詮索好きのプライ

 駅前へ通じる通りは、学生服やスーツ姿を中心に多数が行き交っていた。街路樹は新緑をいただき、暖かな風がふわりそよぐ。先月はまだ冷え込む日があったのに、街はすっかり春爛漫に染まっていた。


「おいしいね」

「うん……」


 僕とマリーはアイスクリームをなめながら街なかの歩道を歩いていた。放課後、僕たちはデートした。朝の授業の件で断固、抗議を示すべく拒否するつもりだった。が、昼食で家に戻ったとき、朝の話をうっかり母さんにしてしまったのが運の尽き。ぜひマリーと仲よく遊んできなさい、断ったら外出禁止、こづかいも減額、と釘を刺された。権力横暴だと訴えたが無駄だった。成人するまでは親の命令は絶対なのだ。


「ね、もしかして朝のことまだ怒ってる?」

「もしかしなくてもご機嫌斜めだよ」

「悪かったってばー」

「君のせいで注意されたんだぞ」

「ああいうときは反射神経と演技力が重要よ。もっと要領よく――」

「せんぱーい」


 歩きながら文句をたれていたとき、女の子の声が聞こえた。道の向こう側に見知った子の顔があった。マリーと同じ制服を着た小柄な女子。手を振り、亜麻色のショートヘアを躍らせて道路を渡って来る。面倒なのに見られてしまった。


「先輩たち、こんなところでなにしてるんですかー」


 詮索好きな目で僕とマリーを交互に見ているこの子は、後輩の二年生、プライだ。生徒会でなにかと関わることが多いので、僕もマリーもよく知っている。ちなみにマリーが副会長で僕は生徒会長だ。遅刻ばかりしているわりに意外と要職に就いてたりする。


「もしかしてまたデートですか」

「そ、そんなところね」


 マリーは視線をずらして答える。僕とつきあうことを学校内でもさしてはばからない彼女も、プライのぐいぐい聞き回る性格は苦手なようだ。またデート、なんて言ってるけど、僕たちはそれほど頻繁にはしていない。語弊がある。


「成績優秀な生徒会長と副会長のふたりがこんなラブラブだなんて、絵に描いたように理想的なカップルですよねえ。いいなあ、うらやましいなあ」

「そりゃどうも」


 どう答えればいいのか困って僕は曖昧に応じた。生徒会役員は、三年生の初日に学校側が決めたことで、僕らが好き好んでなったわけではない。


「プライはなにしてるの。友達と待ちあわせ?」

「はい、ちょっと遅れるみたいで。ねえ、先輩たちってー」話をそらして追い払おうとするマリーをプライはさらりと交わす。「どこまでやったんですか? もうキスとかしちゃいました?」

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