22-5 マリーの異変
マリーの顔つきは翌日以降も変わらなかった。というより日ごとに深刻さを増しているように見えた。
友達の女子の何人かが、どうしたのかと尋ねていたけど、彼女はわけを語ろうとしなかった。
悪友のビシーは、からかい半分、本気半分で、倦怠期かと僕に聞いた。僕は、彼女がどうしたのかさっぱりわからない、と首を振った。
彼女は気のたるみを先生に指摘されることが増えた。ときどき隣の席をうかがうと、ノートのとりかたが彼女らしくない粗雑さだ。よくわからない言葉や図の落書きも散見した。
ソフィア先生も心配したのか、彼女を職員室に呼び出したこともあった。あとで先生に尋ねてみたけど、やはり彼女は口が重くろくに話を引き出せなかったそうだ。逆に先生から、なにか知っていることはないかと聞かれた。眼鏡の奥の目を曇らせ、かなり案じている様子だった。
これまでもさほど校内で行動をともにしていたわけではない僕たちは、先日来、ほとんど接点をなくしていた。
代わりにまとわりつくようになったのがプライだ。
どこからともなく現れては僕にからんでくる。三年生と二年生は階が違うのに。今まで以上に強引さが目だつ。
彼女は「マリー先輩とうまくいってないそうですね。寂しくないですか? あたしとデートしましょうよ。あたしのこと、マリー先輩の代わりにしてもらって全然いいですよ」だなんて平気で言ってくる。僕をなんだと思ってるんだ。
そんな節操のない男子じゃない、ときっぱり断った。




