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4-2 美しき怒れる四天王、ソフィア先生

 僕たちはこの船で二種類の夢を見る。ひとつはベッドで寝ているときに見る夢。もうひとつは機械的に作り出される仮想世界の夢。


 後者を見るには「コクーン」を用いる。楕円形の機器の名称だ。人間より一回り大きな装置で、なかへ横たわるようにできている。手狭の部屋の大部分を占めるように、二台のコクーンが並んでいた。左側にはグミが入っている。目を閉じていて眠っているかのようだ。厳密には通常の睡眠とは異なる状態とされるけど、慣用的、感覚的に「眠る」と表現することが多い。


 僕は空いている右側のコクーンに入った。内側は革張りに似たクッションが敷き詰められている。硬すぎず柔らかすぎず適度な弾力がある。その上に座り、ゆっくり体を倒した。目をつむる。手動や音声による操作は不要だ。コクーン内に人が横たわったことが検出されると脳の状態が読みとられる。使用者は意識するだけでコクーンの利用を開始できた。僕は脳内で、中学校への登校の意思を示した。コクーンの反応は迅速だ。速やかに眠りに落ちるような感覚にさらわれる。数秒で僕は意識を消失した。


 人間の脳は寝ているときでも絶えず活動している。睡眠中に一番活発になるのは夢を見ているときだ。覚醒時に近いレベルまで上昇することもある。外部からの刺激で脳に強制的に「夢」を見させ、その内容までコントロールするのがコクーンだ。より正確には、コクーンの接続している宇宙船のメインフレームが司っている。コクーンはただの大型端末だ。このデバイスにより、僕たちは、宇宙船という閉鎖環境にいながら、学校はもちろん、街や自然のなかを出歩くことができる。宇宙で人間の精神衛生を良好に保つには必須の設備とされていた。コクーンで体験できる仮想世界のことを僕たちは「コクーンの夢」と呼んでいる。


 混沌とした闇のなかから僕の意識が浮上する。まるで原始の宇宙を漂っているかのようなあやふやな状態。ぼんやりとした意識が次第に焦点を結んでいく。夢から覚めるときのような感覚。実際には覚醒ではなく仮想世界へのログインなのだけれど。

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