19-6 夏と花火と初めてのキッス
笛太鼓を思わせるにぎやかな音が会場に響き渡る。大小さまざまの火輪が夏の夜空に咲き乱れた。
オレンジとピンク、黄緑と青といった同系色もあれば、赤と緑、黄色と紫といった反対色の組み合わせもあって色彩豊かだ。
花火の種類も多種多様で、オーソドックスなタイプを中心に、細かい火花が散って雨のように、ざあーっと音をたてるものがあれば、柳のように長く尾を引くものもあった。閃光弾のごとく一瞬、強力な光と大音響を放つ花火の連打には、グミは、うっせ、と耳をふさぎ、ミリーはきゃあきゃあとはしゃいだ。風に乗って運ばれる火薬の匂いに僕も高揚させられる。
「手、つなご」
花火の合間に隣のマリーが耳元でささやいた。
えっ、と僕がとまどっていると、彼女の右手が僕の左手に触れる。遠慮がちに握ってくるその手は温かく、しっとりと汗ばんでいた。
そのまま体ごと寄せてくる。
「あ、あの、だめだよ」
「私たちもう、ハグもしちゃったんだよ」
目をあわせられない僕。彼女もうつむきがちだ。花火が僕たちをはやしたてるように打ち上げられる。
彼女が指をからめしっかりと握り込む。頭に頭をくっつけてきた。柔らかな髪と硬い頭がこつんと触れる。
心臓があの閃光弾の花火のようにどんどんと打った。
「だ、だめだって」
「だめじゃないもん」
彼女は僕の左手をきゅっと握り締めた。加速した脈が手を通して伝わらないかとあせった。
僕たちの手のなかは、どちらのものとも区別のつかなくなった汗でぐっしょりと濡れていた。




