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19-1 夏と花火と初めてのキッス

 一週間ほどたってコクーンの夢の暑さにも慣れてきた頃。

 学校から帰るとグミがリビングの母さんになにかを頼み込んでいた。

 母さんはソファーで誰かの上着を仕立てている。家族の衣類を縫うのも女の仕事だ。船の製造機能は生地は造れても、衣服の完成品を造るのは不得意らしい。デザインの問題もある。マリーに言わせると母さんはセンスがいいそうだ。


「ねえ、行ってもいいでしょ」

「今、針仕事をしているんだから揺すらないで」


 隣ですがりつくグミを、母さんは袖を縫いながらたしなめた。

 話を聞いてみると、あさっての花火大会に行かせてほしいとのお願いだった。僕もマリーから誘われている。


「あなたは約束を守らないからね」


 母さんは合成生地に針を通して厳しめの態度を見せる。

 去年、花火大会に行ったとき、僕とマリーからはぐれたグミとミリーは、ふたりで祭会場を遊び回り、花火が終わっても相当遅い時間まで戻ってこなかった。メールを送っても携帯を鳴らしても無視。帰ってから母さんたちにこっぴどく叱られていた。マリー情報によると、ミリーは叔母さんに尻を叩かれたらしい。

 それ以来、このふたりの夜間外出はかなり厳しく制限されている。


「ちゃんと兄ちゃんたちと一緒にいるから。時間どおりに帰るから」

「困ったわね」母さんは縫いものから顔を上げてグミを見すえた。「もし約束を破ったら小学生の間は夜の外出いっさい禁止。当分おこづかい抜きでゲームも禁止。それでもいいの?」

「うんっ、約束する。ありがとう!」


 グミは飛び跳ねて喜んだ。そんなきつい条件をふたつ返事で飲んで。どうなっても知らないぞ。

 浮かれるグミを他人事として見ていた僕に思わぬ飛び火があった。


「クコ、あなたも監督責任で、グミが守らなかったら一カ月おこづかいなしよ」

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