17-14 心弾む夜
見送りを終えた僕たちは通路を引き返した。半分に減った足音にもの寂しさが漂う。父さんと母さんは今夜はすばらしかったと語りあい、グミはミリーへの文句をぶつぶつ言った。僕だけが喪失感でぼんやりしていた。
明日からまた、毎日学校でマリーに会える。そう考えてももの憂げな気持ちは晴れなかった。どうして彼女のことでこんなにもやもやするんだろう。
ダイニングはあらかた片づいていた。叔母さんたちが帰りぎわに手伝ったんだろう。リビングにいくつか残っている皿を運ぼうとすると、母さんに「私たちがやるからあなたたちはもう寝なさい。ちゃんと歯磨きするのよ」と言われた。
夜ふけまで遊んでくたびれたのか、グミは大あくびを連発していた。逆に僕は目がさえてすぐに眠れる気がしなかった。
明かりを落としベッドに入る。
今日の濃密な夜を思い返してみた。いろんな非日常のできごとがあった。薄暗い自室でひとり、無機質な天井をながめていると、全部夢だったような気がしてくる。陰鬱な日々は続いて、夢のような時間は文字どおり夢と消え、船からいっさい出られない――
僕は頭を振った。恐ろしい想像だ。こんなに希望に満ちた夜が、僕だけの幻だったなんて、そんなの、悲しすぎる。
寝返りをうつ。背中を丸め布団を握り締めた。
やってやる。もしもこれが夢だというなら、もう一度父さんと渡りあってみせる。次も父さんと母さんの心を動かす。
今日、マリーたちに会って改めてわかった。僕たちには外との関わりが不可欠なんだと。夕方までみんなささくれだっていたのに、隣の船の家族と会っただけで、明日からコクーンを使えるというだけで、見違えるほど元気になった。どれだけ僕たちに必要だったか痛感させられる。
僕はやる。元の生活を取り戻すためならまた父さんを口説いてみせる。僕にはやれる。大丈夫。なにも心配しなくていいんだ。なにも――
眠りつくまで、剣呑な空想を払おうと自分を励まし続けた。
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