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僕と許嫁《かのじょ》の宇宙生活  作者: みさわみかさ
閉じられた宇宙船《ふね》
110/203

17-10 心弾む夜

 心地いい時間が流れた。

 グミとミリーはほとんどゲームをしていた。たまに突発的に鬼ごっこや隠れんぼを始め、僕とマリーも参加させられた。とにかく彼らは休みなく遊び続けた。

 僕たち兄と姉はその元気に苦笑しつつ、学校に戻れることなどについて語らったり、チェスを指して互いの腕を確かめあったり、トランプをしたり。

 隣のダイニングからは大人たちの陽気な談笑が聞こえ、ときおり歌を口ずさむ。昔、いつだったか聞いたことのある、古くて懐かしい旋律。

 船の一員、ふたつの家族は、思い思いにゆったりと、時の流れに身を任せた。


 マリーはカードをテーブルに置きながら言った。「私ね、クコの電話、待ってたんだよ」


 えっ、と顔を上げると、彼女は少しだけもの憂げに、手持ちのカードへ目を落としていた。


「最後にケンカして切ったあと、また言いあいになるのが怖くてかけられなかったんだ」彼女は手のなかのカードを選ぶ素振りをしている。「クコからかけてくれたらケンカせずに話せるかなって気がして、ずっと待ってた」


 僕がカードを出すと彼女も手札をきった。さっきから彼女はうつむきがちだ。


「クコが電話をくれなくなって、もう嫌われちゃったんだ、ってずっと泣いてた」


 マリー……。

 彼女がベッドにうつ伏せ、ひとりさめざめと枕を濡らしているさまを想像した。いたたまれなくて、振り払うように一度、ゆるりと首を振った。


「――僕が」真剣な声が出る。「君を嫌いになるなんてこと、あるもんか」


 彼女がはっと顔を向けた。


「僕だって、君の電話を待ってたんだ」次のカードを置く。「ケンカして面白くない気分にはなったけど、嫌いになったことは一度もない」


 ちょっと照れがあって、自分のカードに視線を逃がした。


「僕のほうこそ、君に愛想をつかされたんじゃないかと気にしてた」


「私が――」彼女がカードをきった。「クコを嫌いになるわけないじゃない」

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