17-10 心弾む夜
心地いい時間が流れた。
グミとミリーはほとんどゲームをしていた。たまに突発的に鬼ごっこや隠れんぼを始め、僕とマリーも参加させられた。とにかく彼らは休みなく遊び続けた。
僕たち兄と姉はその元気に苦笑しつつ、学校に戻れることなどについて語らったり、チェスを指して互いの腕を確かめあったり、トランプをしたり。
隣のダイニングからは大人たちの陽気な談笑が聞こえ、ときおり歌を口ずさむ。昔、いつだったか聞いたことのある、古くて懐かしい旋律。
船の一員、ふたつの家族は、思い思いにゆったりと、時の流れに身を任せた。
マリーはカードをテーブルに置きながら言った。「私ね、クコの電話、待ってたんだよ」
えっ、と顔を上げると、彼女は少しだけもの憂げに、手持ちのカードへ目を落としていた。
「最後にケンカして切ったあと、また言いあいになるのが怖くてかけられなかったんだ」彼女は手のなかのカードを選ぶ素振りをしている。「クコからかけてくれたらケンカせずに話せるかなって気がして、ずっと待ってた」
僕がカードを出すと彼女も手札をきった。さっきから彼女はうつむきがちだ。
「クコが電話をくれなくなって、もう嫌われちゃったんだ、ってずっと泣いてた」
マリー……。
彼女がベッドにうつ伏せ、ひとりさめざめと枕を濡らしているさまを想像した。いたたまれなくて、振り払うように一度、ゆるりと首を振った。
「――僕が」真剣な声が出る。「君を嫌いになるなんてこと、あるもんか」
彼女がはっと顔を向けた。
「僕だって、君の電話を待ってたんだ」次のカードを置く。「ケンカして面白くない気分にはなったけど、嫌いになったことは一度もない」
ちょっと照れがあって、自分のカードに視線を逃がした。
「僕のほうこそ、君に愛想をつかされたんじゃないかと気にしてた」
「私が――」彼女がカードをきった。「クコを嫌いになるわけないじゃない」




