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3-4 僕たちの婚約

 テーブルに着いているのは、父さんと母さんにマリー。弟のグミはいない。彼女の家の船に行ってるからだ。たぶん、彼女と入れ替わりで向こうで食べてくるんだろう。お互いの家族は交流のため船を行き来する。特に子供の僕たちは多い。将来の結婚に向けて関係を深める目的で。

 僕が最後に席に着いた。もちろん彼女の隣だ。

 今日の夕食はステーキにつけあわせ、スープだった。母さんによるとポタージュボンファムというらしい。料理は母さんの担当だ。

 食材は船が製造する。原料は直接の飲食は不可能で、微生物による発酵などで合成される。そこからさまざまの加工を経て肉や野菜などができあがる。その詳細は非常に高度なものらしく、ブラックボックス化されている。もっともそれはこの船を支える技術全般にいえることで、僕たちが学びうる知識はほんの一部にすぎない。


「やっぱりこっちで食べるご飯はおいしい」


 うれしそうにマリーは肉を口に運ぶ。顔の下半分に豊かな黒髭をたくわえた父さんが「将来、うちに住むのが楽しみだな」と言い、彼女は「うん」と屈託なく答えた。目と鼻の先を飛んでる船同士なのにな。


「毎日一緒にご飯っていいよね」


 彼女の感想に「そう?」と僕はスープをすすりながらそっけなくコメントした。小さい頃から毎日のように見ている顔だ。特に思うこともない。


「そうよ。そう思うべきよ。私はそうしてる。そのほうがお互いにもっと好きになれるもの」

「マリーの言うとおりよ。愛情は意識して生み出すものよ」


 母さんが彼女に賛同した。その横で父さんもうなずいている。そんなこと言われたって、生まれたときから一緒の彼女なんて兄弟みたいなものだ。実際、いとこだし。特別な感情を持てと言われても困る。釈然としないまま僕は口を動かした。

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