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僕と許嫁《かのじょ》の宇宙生活  作者: みさわみかさ
閉じられた宇宙船《ふね》
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16-8 クコは立ちあがる

「でも、叔父さんたちは賛成してくれるの?」


 グミがふと心配そうに疑問を口にした。

 そう。うちだけで解禁してもマリーには会えない。大きな問題はまだ残っている。


「私が話そう」


 父さんが席を立ち、僕の背後にある壁掛けの電話を取った。全員の視線が集中した。


「――伯父さんだ。お父さんに代わってくれるか」


 父さんのその様子から、叔母さんではなくマリーかミリーが出たみたいだった。マリーが僕の電話を待ってたんだとしたらいいな。

 そんな想像をしていると叔父さんが出たようだ。


「私だ。夕食どきにすまない。だいじな用件を相談したいんだ」


 それから父さんは長く話した。

 僕から出された意見と願いであることを初めに伝え、先ほど交わした会話の内容を述べた。

 激高する叔父さんの声が何度も聞こえてきた。そのたびに父さんは耳から受話器を遠ざけながらも、冷静に説得を試みた。強いストレスとエンジニアとしての矜持が、叔父さんの怒声の源になっているんだと思った。ちょうど父さんと同じように。説き伏せるのは簡単なことではないだろう。果たしてうまくいくか。


 やがて電話の向こうから大きい声がしなくなった。

 代わりに父さんが沈黙する場面が多くなった。向こうで叔父さんと叔母さんが話しているのかもしれない。

 僕たちはいつの間にか父さんの周りに集まっていた。固唾をのんでなりゆきを見守っている。電話の向こうでマリーも同じようにしているんだろうか。


「――よし、じゃあそうしよう」


 長い対話の末、通話は終わった。壁に受話器を戻した父さんが僕たちに振り返る。


「向こうでもコクーンとハッチの制限を解除することが決まった」

「やったーっ」


 僕とグミは飛び上がって喜びの声をあげた。最後の懸念が解消された。これで完全に元の船団に戻れるんだ。


「ねえ、向こうの船に行ってもいい?」


 尋ねながら僕とグミは走りだしていた。

 もう夜でしょ、との母さんの制止を振りきって僕たちは通路を駆けた。

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